永久保存版 中田英寿(1)

魅せられし変容。 by金子達仁(2006.8)

 10年前の今頃、世間話の最中に、彼が自分のコンプレックスとして真っ先にあげたのはルックスだった。なるほど、あのころの中田英寿は個性的な顔だちと存在感で注目を集めるようにはなっていたが、川口能活のように「ハンサム」と言われていたわけではなかった。だが、自信も、知人も、語学力も、ほとんどゼロに近い状態で飛び込んだヨーロッパでの8年間は、中田英寿の顔だちをどんどんと魅力的なものに磨き上げていった。経験と自信を刻み込んだ彼の風貌は、いまや、多くのヨーロッパ女性から「セクシー」と称賛されるまでになっている。
 変わり続ける中田英寿――それゆえ、わたしは緊張せずにはいられなかったのだ。(p.9)

彼との旅はいつも冒険になる。 by宮本敬文(2006.8)

 その少し前、マルセイユに世界選抜の試合を見に行った。このとき交代するロナウドからキャプテンマークを渡されていた。試合後、「ねえあのキャプテンマークは?」と聞くと、「ロッカールームに置いてきた」と答えた。終わってしまった試合には何の感傷もないのが、彼の姿勢だ。彼の中で思い出とは次に進む為の学習ステップでしかなく、感傷ではない。この頃から日本のマスコミは彼をワガママな変わり者として伝えるようになる。(p.26)

生意気だって評判なんでしょ、僕。 by金子達仁(1997.8)

 人間って極限状態になると、時間が止まるっていうか、いわゆる”走馬灯が駆けめぐる”状態になるっていうじゃないですか。僕、今まで2回、そういう経験があるんです。
 一度は交通事故を起こした時。自分の身体が宙を舞っているのを感じながら、「ああ、これで俺も終わりか」なんて漠然と考えてた。時間にしたらほんの一瞬だったと思うんですけど、でも、ホントにあの時は時計が止まったような感じだったんだよなあ・・・・・・。
 で、もう1回はオリンピック最終予選のサウジアラビア戦の時。覚えてます?後半30分ぐらいだったと思うんですけど、CKをドンピシャリのヘッドで合わせられた場面があったじゃないですか。あれ、相手の頭がボールをとらえた瞬間から、僕のなかで時間が止まったんですよね。あ、くるぞ、これはヨシカツは取れないな、えっと相手はあそことあそこにいるから、クリアはあっちの方にしておかないと・・・・・・ってね。試合が終わった後、まぐれだとかたまたま頭に当たっただけだとかってからかわれましたけど、ホントのホントに、たっぷり余裕を持ってやった、計算通りのクリアだったんですよ。(p.35)