死の谷(4)

デスバレー国立公園の中心地、ファーニス・クリークから北北西へ進むこと55マイル、そこにはScotty's Castleと呼ばれる別荘があります。まさに「城」という名にふさわしいゴージャスさで、デスバレーに行かれた際には必ず訪れてみるべき観光スポットと言えるでしょう。ただし!片道80㎞ですから、一人で行くことはまったくオススメできません。か〜なりつらかったです(笑)

スコッティの城、と言っても持主はスコットさんではなく、アルバート・ジョンソンという保険業界の大金持ちにして、今で言うところのベンチャーキャピタリストでした。彼は普段はシカゴに住んでいて、冬の間避寒のためにこの別荘にやって来るのでした。ではなぜ「スコッティの城」というのでしょうか。『地球の歩き方』によれば、以下のような事情だそうです。実際現地のガイドの説明によれば、2人は非常に仲が良く、スコッティは冬に限らずこの別荘に入り浸っていたそうです。

シンシナティ生まれの元ウェスタン・ショーのスター、大陸横断記録の特別列車を走らせた男、金鉱の試掘屋、目立ちたがり屋で山師・・・・・・ウォルター・スコット。ジョンソンは、スコットの金鉱への影の投資家だった。スコットがいつもこの城が自分のものであるように吹聴したため、一般にそう信じられるようになったという。

ガイドツアーのタイミングに合わなければ「城」の中には入れないので要注意です。内部は、とても1920年代にこの「死の砂漠」の中に作られたとは思えないほどの快適さで、落ち着きと豪奢な雰囲気の混在した内装もかなりいけてます。冷蔵庫もあるんですよ。もちろんバスも。生活必需品は当時すぐ近くまで走っていた列車で運んでいたようです。写真を載せてますが、自動演奏するピアノとか、パイプオルガンとか、エンターテインメント面でも相当充実していたようです。今ですら砂漠のど真ん中にこんな快適な別荘をつくろうと思ったら相当にコストがかかるでしょうから、ジョンソン氏は途方もないお金持ちだったのでしょうね。

さて、おしゃべりはここで終わりです。あとは写真で雰囲気を感じてみて下さい。では!
Scotty's Castle1
Scotty's Castle1 posted from フォト蔵
Scotty's Castle2
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Scotty's Castle3
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Scotty's Castle4
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Scotty's Castle5
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Scotty's Castle7
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Scotty's Castle8
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Scotty's Castle9
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Scotty's Castle10
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Scotty's Castle11
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Scotty's Castle12
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Scotty's Castle13
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Scotty's Castle14
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Scotty's Castle15
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アングロサクソン的思考と資本主義の変わらぬ本質

シャルムエルシェイクのホテル
シャルムエルシェイクのホテル posted from フォト蔵
昨日はMorality&Leadershipのfinalでエッセイタイプのin-class試験を受けた。そのうちの一つが大体以下のような内容のケースだった。

「とあるIPO済みのハイテク・ベンチャーにおいて、curporate purposeを定めたいとCEOが考えているが、マネジメントチームの間で株主、顧客のいずれの利益を重視するべきか、あるいは両者+従業員、社会のすべての利益をバランスすべきか、という3つの立場が拮抗している。①自分がそのCEOだとしたら、どの立場を取るか。それはなぜか。②それぞれのpurposeの違いによって企業のパフォーマンスに相違は生まれるか。生まれるとすればそれはなぜか。③現在の3つの立場が拮抗している状況下において、①を採用するために実際にどのようなアプローチを取るか。」

そして今日は、明日の今年度最後のアントレ・ファイナンス勉強会に向けて、Sahlman教授によるDCF法のnote("Note on Free Cash Flow Valuation Models" HBS 9-288-023)を読んでいる。

半ば必然的に、自分の中でリーダーシップの試験において問われたことと典型的なファイナンスの考え方の中に示されていることの二つのロジックがきれいにつながった。そして、結局、株主利益の最大化という哲学は、資本主義の変わらぬ本質を体現しているのだなと改めて思わざるを得なかった。


株主利益の最大化、という考え方は、ものすごく単純化して言ってしまうと、DCF法に基づいた企業の現在価値を最大化せよ、という話になる。その方法をさらに単純化して言ってしまうと、

①コストカット+出来るだけ高い製品orサービスのプライス → Higher profit margin
②net working capitalも出来るだけ少なくする。
③capital expenditureは出来るだけ小さくする。

ということになる。①②③が実現されれば各期のキャッシュフローは極大化され、cost of capitalやdebt amount等の他の条件が等しい限り、企業の現在価値も極大化される。そうすると、株主へのリターンも極大化される。そして、それを目指しなさい、というのが株主利益最大化の哲学の意味するところだ。


でもそれって結局どういうことかというと、①をbreakdownしてみると、
○従業員の給料は出来るだけ低く抑える。
○価格は出来るだけ高くして顧客の利益は出来るだけ減らす。
○将来に向けたR&Dや設備に対する投資も出来るだけ減らす。
等々の行動につながるということが分かる。corporate purpose寄りの言い方をすれば、
従業員への利益配分は出来るだけ減らす。
顧客に対する利益配分は出来るだけ減らす。
という話になる。3つめの点について同様に抽象化して考えれば、
長期的利益よりも短期的利益を重視する。
ということになる。極端なケースだけど、この長短の話は単純なasset売却のためのLBOのケースなども念頭に入れればよりはっきりすると思う。

ものすご〜く単純に言ってしまえば、従業員もお客も長期的な利益もすべて「搾取」して、とにかく投資家の利益を最大化せよ、と言ってるわけだ。したがって、何をいまさら、と思われるかもしれないけれど、「株主利益を最大化せよ」というcorporate purposeを信奉するアングロサクソン系の企業は資本主義の変わらぬ本質に忠実に従い続けているのだ。


※DCF法自体を批判しているわけではありません。念のため。


日本人だからかどうか分からないけど、僕はこの価値観はまったく好きになれない。と改めて確認できた。株主利益最大化命題は、要するに現場で必死に頭と体と時間を磨り減らしながら戦っている企業人が資本家のためにもっともっと必死に、しかも出来るだけ安い給料で働くことを求めているわけで、反感を感じずにはいられない。僕が資産家の息子として生まれていたらもしかしたら正反対の価値観を持ってしまっていたかもしれないという一抹の懸念は残るけれども。

ここでは詳細には論じないけれど、価値観の観点だけではなく、純粋に経済的な観点からも、実は「株主利益最大化」は株主利益を、少なくとも長期的には、最大化することにつながらないのではないかと思う。例えば、顧客利益を最優先し、次に従業員の利益を優先する、株主の利益はその次、という考え方の方が、高い顧客満足、従業員の高いモチベーションを通じて、長期的には高いリターンが得られるのではないだろうか。少なくとも長期的にその企業の株を保有する株主にとっては。

大きく国の視点から見ると、フランスみたいに労働者を保護しすぎて国としての競争力を失うのもどうかと思うけれども、日本はアングロサクソン的思考にどっぷり根ざした方向には行かない方がいいだろうと思う(正確に言えば行って欲しくない)。小泉政権下で相当アメリカ型の制度に移行したけど、行き過ぎないうちに日本としての独自のあり方を、哲学レベルからきちっと考える必要があると思う。


卒業までにもうちょっといろいろ深く考えてみなくちゃ。

撃沈するの巻

ぱーむすぷりんぐす
ぱーむすぷりんぐす posted from フォト蔵
やられた〜
アメリカに来て以来確実に最も出来なかった。。。
Financial Policy & Strategyのfinal。


終了後、提出時の教授との会話:
教授(うれしそうに)「ほっしー、難しかったか?」
僕(力なく笑いながら)「かなり難しかったですよ。。。」
教授(さらにうれしそうに)「それがfinalだよ(ニヤリ)」


何がうれしいんじゃこのMr.Beanおっさんは!!


とかなり意味不明なBinay教授だった。「してやったり」という感じなのだろうか。さて、その内容なんだけど、ほんとに厳しかった。でもexamを手にした瞬間に、これはみんなできないだろうな、自分もまちがいなく相当できないだろうな、だから焦ってもしょうがないな、というあきらめに似た確信に基づく落ち着きが一瞬で出来上がったので、逆に終始マイペースで取り組めた。どんなものだったかというと、
①16:15-18:45の2時間半
②Word及びExcelで回答(後ほどファイルで提出)
③設問は5つ。
④HBSのケース(本文5ページ、Exhibit10個)を読んで、③に答えるessayを作成。
⑤double spaceで5ページまで、appendixは何ページあっても構わない。
というもの。


こんな短時間で満足のいくものが出来るわけない!!


特に、僕の場合、読むのがまだ時間がかかるし、書くのも時間がかかる。その時点で分析やスプレッドシート作成に投じられる時間は相当削られてしまう。こりゃ英語力に不安のある留学生にはむちゃくちゃ不利な試験だなあ、と思いつつも、それはアメリカに留学してきている以上言っても詮ないこと。それにしても時間が足りなかった。pro formaも作れないままに、ほぼ95%定性的な議論ばかりで終わってしまった。

若干オイオイと思うのは、出題範囲がほぼ中間試験と同じ(capital structure)で、後半にやったevaluationだのM&AだのLBOだのはまったく絡まずに終わった。う〜ん、折角勉強したのに、と残念な感じ。


いやー、振り返ると散々な結果なんだけど、終了後のインタビュー結果を踏まえるとネイティブも含めほとんどの人が満足に終えられなかったようなので、やはりみんなできないであろうという仮説は概ね正しかったようだ。おそらく、finalではあまり差はつかないだろう。と信じてさっさと忘れて次を片づけよっと。

ベンチャー・キャピタル・メソッド2

クレアモントの曇り空
クレアモントの曇り空 posted from フォト蔵
やったー、終わった。1時間半ほど寝られそう。
2つめのノートも非常に面白かった。基本的にカバーしている内容は先のスタンフォードのものと同じ。ただし、HBSの方がより深く考察されている。ページ数が2倍(52ページの半分は数字だった)なので当たり前だけれども。大きく違うのは、多段階の投資が想定される場合の持ち分の計算の仕方について、スタンフォードdiscount方式(勝手に命名)現在価値を軸に考える方式で計算していたのに対して、HBSがcompound方式(同左)将来価値を軸に考える方式で計算していること。個人的には後者の方がシンプルな気がした。ほんとは一緒なのだけれども。
この二つのノートはどうやら両方とも、しかも、S→HBSの順に読むと具合がよいようだスタンフォードの方は至極シンプルに、ポイントだけをおさえて書かれているので、最初に全体像を頭にすぱっと入れてしまう上で最適。その上でハーバードの方を読めば、楽しみながらより深みに触れることが出来る。さすが忽那さん、考え抜かれた構成になっている気がしました。
いろいろ勉強になったけれど、一番の収穫は、VCの議論で「IRR」という単語を耳にするたびに感じていた違和感がすっきりしたことだ。なぜ違和感を感じていたかというと、何となくコーポレート・ファイナンスベンチャーファイナンスの議論ないし話題の中で使われる「IRR」の概念が何か違うなあと思いつつ、何が違うのかはっきりしなかった点だ。それが今回自分なりによく分かった気がする。ベンチャーファイナンスの場合も、ターミナルバリューをIRRでdiscountしてそのうちの投資家の持ち分が(最低限)投資額に等しくなるように考えるので、結局「NPV = 0」にはなるわけで、定義的にはコーポレート・ファイナンスと変わらないのだけれども、根本的に違うのは、コーポレート・ファイナンスにおいてはNPVをゼロにするようなIRRを計算によって見付けるのに対し、ベンチャーファイナンスにおいてはそれが別の観点から決められるということだ。ちなみに、後者の場合最終的にどこでNPV = 0になるように調整しているのかというと、新規投資に伴う発行株式数で調整されている。同じ言葉で、同じ定義の概念であっても、CFとVFでこんなに考え方が違ってくるんだなといういい例かもしれない。

☆ちなみに、勉強会を終えてさらに、VFの文脈では「実際の収益率」としても「IRR」が使われていることを再認識し、さらに両者の乖離が大きいことが分かりました。

と、なんかこんなまじめな記事を書いていると頭が冴えてきてしまった。寝なくちゃ。。。


PS
途中へばりそうになった時間帯に早稲田の皆様のペコリナイトによって見事復活することができました。大感謝でございます(笑) I-Banquet最高やね(笑)

ベンチャー・キャピタル・メソッド

ラスベガスのどこか
ラスベガスのどこか posted from フォト蔵
明日は3週間おきに開かれる神戸大の忽那教授によるアントレプレナーファイナンスの勉強会。もう4回目になり、だんだんファイナンスらしい数字よりの話になってきた。カチカチとロジカルな議論ばかりなので基本的に楽しい。特に、コーポレート・ファイナンスで学んだ成熟した企業向けのファイナンスのあり方と色んな面で異なるので、比較しながら整理していく感じで頭に入ってきやすい。

でもやっぱり、毎回木曜の10時までの授業が終わってから徹夜で準備することになるのでその辺はちょっときつい。もっと計画的に早めに分散してやっておかない自分が悪いのだけれど、4回目になっても改善されず(ToT)

まあ楽しいのでいいや。

今日もケースは二つ。今一つめを読み終えたので気分転換、眠気覚ましに適当なことを書いてみる。

一つめのケースは、Stanford GSBのケースで、"A NOTE ON VALUATION OF VENTURE CAPITAL DEALS"(E-95)というタイトルのもの。VCの視点から見たVBのバリュエーション法のうち、最も単純なベンチャー・キャピタル・メソッドについて説明したものだ。Stanfordのケースはあまりクラスで使ったことがなかったけど、面白かったのが、ライバル校であるHBSのサイトで販売されているという事実。背景についていろいろ考えちゃうけど、今日は面倒くさいので書きません。

このケース、ていうかノート、では、ベンチャー・キャピタル・メソッドについて、単純な1回だけ投資が行なわれるケースから2段階で投資が行なわれるケースまで、非常にシンプルに説明されていて分かりやすい。前者については将来価値を軸にして考える方法と現在価値を軸にして考える方法の二つが紹介されていて、VCから見た割引率のリスクファクターを分解してよりクリアに分析、評価する方法についても論じられている。後者についても大変分かりやすく説明されている。眠くてふらついてる頭にもちゃんと沁みてきたから相当分かりやすいはず(笑) この分野に興味のある人にはオススメです。

しかし、1年少し経って気づいたけど、ケースを読んでポイントをおさえるのがすごく早くなっていることに驚く。1年前のマーケティングのクラスなんて一つ分析するのにおそろしいほどに時間がかかる上に大した分析が出来ていなかったのに、例えば今セメのグローバル・エコノミーという企業のグローバル・ストラテジーについて多様な観点から分析する授業のケースは一度じっくり目を通せば十分授業の議論についていけるくらいになった。1回の授業で2つのケースを使うのでそれぞれに関するディスカッションは浅くなるという事情はあるのだけれど。まあでも一応多少は進歩しているのだと自分を慰めておこう。

さて、現実に戻りましょう。次のケースはHBSのおなじみSahlman教授による"A METHOD FOR VALUING HIGH-RISK, LONG-TERM INVESTMENTS: THE VENTURE CAPITAL METHOD"(9-288-006)。同じテーマのはずなのに、Stanfordの13ページに比べてこちらは52ページ。どう切り口が違うのか楽しみでもあるけど、朝までに終わるかどうか自信ナシ。。。<<おまけ>>

先日のInternational Banquetの実際の映像がYouTubeにupされました。是非のぞいてみてくださいな。
マイアヒ
ペコリナイト
氣志團1
氣志團2

快!!

今日は(final examを除いて)最後のFP&Sのクラス。
かなり爽快な締めくくりとなったので喜びのご報告です。
相当知的/体力的/時間的/心理的な投資をしているので、それなりの大きなカタルシスがなければ心のNPVはポジティブにならないというものです。今回は十分◎。

第一に、今回の破産(CH11)&リストラケース(Marvel)でも、前回のM&Aケースでも、全体的に教授が意図した分析の全体像をきちんとフォローできていたということが嬉しかった。褒められたりとか成績がいいとかそういうことではないのだけれど、自分自身で色々試行錯誤した結果作ったモデルやロジックが、それなりにその世界で先行している先人の考え方のポイントをきちんとおさえられているというのはなかなかグッと来ることだ。

第二に、株価の算定について、①WACCでcost of capitalを出す、②DCF法で合併後のPVを出す、③PVからdebtを引いたもの=equityを# of sharesで割って株価の理論値を出す、というやり方を取っていたのだが、先週終了後に一緒に食事に行った「全部のwrite-upでAを取っている」恐るべきチームのメンバーにdebtを引くところに間違いがあると結構自信を持って批判されていた。「マジ?」と内心不安だったところだったのだが、結局僕のやり方が正しかった。かなり爽快。Binay教授はそういう肝心なところをケースをやる前には講義せず、自分で考えろ式の教え方(その是非はさておいて)をする人なので、たまにこういう基本的なところで悩む。でも結果大オーライ。

第三に、授業終了後、その「オールA」チームの2人から、来週のファイナルに備えてstrategyの勉強をしたいから、先々先週の僕らのwrite-upのファイルをコピーさせて欲しいという申し入れがあった。これは教授からいいグレードをもらえること以上に嬉しいことかもしれない。相当時間とエネルギーをかけてやったことを認めてもらえたというのも影響しているけど、peerの学生から、口だけでなくはっきりと何らかの裏付け的行動を伴って高く評価してもらえるというのはそうそう頻繁にあることではないからだ。彼ら二人がなかなかcharmingな女の子sであることを割り引くとしても(笑)

というわけで、最後の授業はなかなかに満足感を得られるものだった。
爽快爽快。


気分転換(現実逃避?)が出来たところでこれから図書館に籠もってstrategyのwrite-upを書かなければ。。。

たかが/されど

いよいよ今セメスターで最も苦しめられ、そしておそらくは色んな意味で最も勉強になったFinancial Policy & Strategyのグループプロジェクトが明日朝9時からのミーティングで終わりを迎える。全部で8つのケースを4人でやっつけたことになる。講義だけの日とmide-termの試験の日を除き、ほとんど毎週だ。それなりに感慨がある。

他のクラスのように、一人でケースを分析する分にはまだ気楽な部分がある。ましてや他のクラスではケースのwrite-upを書くことなど求められない。しかし、得てして浅く狭い分析にならざるを得ない。他方で、FP&Sの授業の場合、第一にwrite-upを書くとなるとさらに深く読み込むし、数字的な分析にも時間をかける。第二に、グループで取り組むゆえに、自分の持っていなかった視点を数多く他のメンバーが提供してくれて、自分の中でのmissing logicが気持ちよくうまっていく(こともしばしばある)。総体として一人でただ読み、分析するよりははるかに勉強になる。おかげさまで、ごく簡単なものではあるけれど、プロフォーマも作れるようになったし、DCF法でバリュエーションも出来るようになった。

ただし、こういう形での学習には相当なコストがかかることはたしか。時間的にも心理的にも。今回は後者の意味で相当勉強になることが多かった。要するにmainly例の人との関わりの中で学んだことなのだが、振り返ってみてどうも必要以上に彼に対して不愉快な思いを感じていた背景には、自分自身の中にnegativeな原因があったようだ。これに気づけたことは大きい。

たくさんあるけどとりあえず、自分は自分より能力がない「ように思える」人に対して強い苛立ちを感じる傾向があるということ。つまり、「なんでこれがわかんないの?」「なんでそんなにロジックがとんでるの?」「それ30分前に説明したじゃん」みたいな苛立ちを、出来るだけ顔には出ないように努めているつもりだけれども、瞬間的に内心で感じてしまうのだ。例の彼との関係が一時必要以上に悪化していた背景には、僕の抱いていた感情がverbal/non-verbalなメッセージとして伝わってしまい、彼の中でさらなる反感を生み出していたのだろうということは想像に難くない。

このような反応を自分の中に生み出していることには、いくつかの内心のassumptionないしbiasのようなものが左右しているようなのだけれど、そこまで書くのは生々しいのでやめとこうと思う。しかし、今回この傾向とその奥にあるものにまで気づけたことは大きい。なぜなら、卒業後、以前よりさらに多くの部下を持つ立場になった場合、このような傾向は極めて有害であると思うから。まだ、もし「できない(ように思える)部下」「やる気のない(かのように見える)部下」に出会ったときに、彼のやる気と力をどう引き出していけばよいか、実践的回答は持っていないけれど、どのようなアプローチをするにしても、相手を否定するような自分の内心の働きは百害あって一利無しだ。マネジメントやリーダーシップの文脈だけでなく、自分の心の健康のためにもまったくネガティブだと思う。このような傾向を創りだしている自分の内心のassumptionやbias、storylineを解きほぐしていくことが極めて重要だなと思う。

たかがMBA、されどMBA

職場で実際に経験するにはそれなりにリスクとコストが高いことを実験的に経験できる。これもMBAの醍醐味の一つかなと思った。