日本憲法史
- 作者: 芦部信喜
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/09/26
- メディア: 単行本
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第一部 総論
第二章 日本憲法史
本章では、明治憲法の特色から日本国憲法成立の過程とその法理までが論じられている。やはり、学部時代の「試験勉強」的感覚を離れて改めて読んでみると憲法論はかなり面白い。
この辺りの議論で特に重要なのが、(1)明治憲法の性質と、(2)日本国憲法の正当性、の二点だと個人的には思っているけれども、本章では非常に簡明に説明が為されている。
第一に、明治憲法の主たる問題点は、以下のようなところだろう。
①国民の自由が生まれながらにして持つ固有の権利(自然権)ではなく、天皇によって恩恵として与えられたものである(臣民権)と規定され、したがって、その保障される範囲と程度にも「法律の留保」がついていたということ。
②形式的には権力分立制がとられていたが、実際には三権それぞれの機関は「天皇の大権を翼賛する機関にすぎなかった」(p.20)ということ。
③軍の統帥権が天皇に属しながら、「それに対する内閣・議会の関与が否定されていた」(p.19)、つまりシビリアン・コントロールが存在しなかったということ。
第二に、日本国憲法の正当性、つまり、同憲法は日本国民の自由意思に基づいて成立したのかどうか、については、たしかに内容はGHQの提示したものではあるし、ポツダム宣言と占領政策によって採択を「余儀なくさせられた」ようなものではあるけれども、以下の三点からして日本国民が自由意思によって「選択」したものだと解するのが妥当だと思う。
①憲法案の要綱が公表された後、かつ議会で審議される前に、完全普通選挙による総選挙が実施され、有権者の選んだ人間によって衆議院と内閣が成立していたこと。
②衆議院、貴族院ともに、修正付きながらも「圧倒的多数」によって可決したということ。
③それ以降、憲法の体現する基本原理が広く社会に定着しているということ。