ラブ&ポップ

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉

10年ちょっと前くらいの女子高生を描いた作品です。

仲の良い友達3人と渋谷で遊んでたときに出会ったトパーズの指輪に魅せられて、どうしてもそれを手に入れなくてはと思い、「援助交際」を決意する女の子が主人公です。と、相当かいつまんで書くとバカらしいように聞こえますが、内容は結構深いです。そして少し怖いです。

ネタバレしてもいけないので、例によって印象的だった言葉だけ紹介しますね。

大したもんですね、と素直に相槌を打っていたが、おまけにオレ似ですごい美人で学校では内田有紀にそっくりだって言われてんだ、とオヤジが言った時、さすがに二人共あきれてしまって、それで説教が始まった。お前らそうやって他人の話を真剣に聞かないからだめなんだよ、今の、十代の終わりの時期が人生でどれらけ大切か要するに分かってないんだよ、真剣になってさ、何か探せよ、今のうちに何かに出会わないと、ろくでもない大学に行って、ろくでもない就職をして、ろくでもない結婚をしなくちゃいけない羽目になるんだぞ。野田知佐と裕美は、オヤジが言っていることは案外間違いではない、と思った。ただ、あんたに言われたくはないよ、と思った。

「ヒロミ、今すぐ欲しいんじゃないの?」
高森千恵子が言って、裕美は、うん、とうなずき、見抜かれてるな、と思った。大切だと感じたものはすぐに手に入れるか経験するかしないと、一晩か二晩で平凡なものに変質してしまう。みんなそのことをよく知っている。プラダのチェーンバッグを買うためにマクドナルドで半年バイトする女子高生はいない。

もちろん本当のことはわからない。四人は、すべてを話せるから仲がいいわけじゃない。相手が答えたくないことを聞いたり、相手が何か答えを欲しがっている時に黙ったりしないから、四人は、友達なのだ。

「こんなことしちゃだめなんだよ、名前も知らないような男の前で、裸になったりしちゃだめだ、それを知ったらすごくいやがる人がいるんだ、誰にだって、必ずいる、そいつが一人でいる時に、悲しくて辛くて泣きそうで一人でいる時に、そんな時に、そいつの大切な女が、男の前で裸になってるって知ったら、どんな気分だと思う? お前はわかってない、こういう時、自分のことなんか誰も考えてないと思ってる、こんな、胸とか触られて、まっ裸で、こういう時に、どこかで誰かが死ぬほど悲しい思いをしてるんだよ」