自信と信頼なくして企業再生なし

Leadership and the Psychology of Turnarounds
自信と信頼なくして企業再生なし
Rosabeth Moss Kanter
ロザベス・モス・カンター
HBR Jun 2003 (DHBR Dec 2003)

○二十余社に及ぶ再建中企業の調査の結果、企業の再生にとって、財務や戦略と同じくらいに重要であり、かつ同程度に困難であるのが、社員たちの自信を回復させることと、信頼関係を向上させること、であることが明らかとなった。
○企業業績悪化の「下降スパイラル」
・会社の業績悪化+先行きへの悲観論
  →他人や他部門を批判し、愚弄する行動の蔓延
  →社の雰囲気悪化+協力関係の希薄化+逃げ+縄張り争い
  →全社的に孤立化が進み、秘密主義が進展
  →消極性と無気力が浸透
○「上昇スパイラル」へ転換するためには:
 ①対話を奨励し、事実を伝える →秘密主義と事実否認の排除
  ・ジレットのジム・キルツのケース: トップマネジメントに対し、自分自身のスタンスを明確化/複数のコミュニケーション・チャネルの設定/イントラ上で社員と直接やりとりする掲示板を開設/マネジメントの業績データを公開
  ・BBCのグレッグ・ダイクのケース: ロウワー・レベルの番組制作者を執行役員会に加えて決定権を付与 →くだけた雰囲気のなかで議論が活発化/CEO本人が社内放送を使って社員に呼びかけ+eメールで1人1人と会話/形式主義をできるだけ排除/信頼を高める温かい人柄
  ・インベンシスのリック・ヘイソンスウェイトのケース: タウン・ミーティング形式の集会を実施/CEOへのダイレクト・チャネルを設け、ユニークな意見や反論に対して直接電話で返答/「『一緒に戦っている仲間』には事実を伝えなければならない」という明確なスタンス
 ②社内に相互尊重の精神を育む →非難と嘲笑を排除
  ・インベンシスのリック・ヘイソンスウェイトのケース:「誰かの非を決して責めてはならないが、非を明らかにすることは必要である」/就任して数ヶ月間、一人を除いてシニア・マネジャーを異動させることはなかった/100人余りの社員達を戦略立案に参画させ、能力を発揮するチャンスを与えた/様々なプロセスに関するベスト・プラクティスを社内53000人の中に求めた
  ・ジレットのジム・キルツのケース: 就任初日の明確なメッセージ/それまで滅多に同席することのなかったマネジャーたちを一堂に集め、何度も議論させた
  ・BBCのグレッグ・ダイクのケース: 執行役員会では問題をすべてオープンにし、堅苦しさを取り除き、和やかな雰囲気に変えた/他人のアイデアをけなしたら「イエローカード」が示されるという遊び的要素を通して、徐々に他人のアイデアを尊重する文化が定着し、信頼関係が高まった
 ③コラボレーションを触発する →逃げと縄張り争いを排除
  ・BBCのグレッグ・ダイクのケース: 就任二ヶ月後に提示した方針「BBCは一つ −まず行動を起こそう」
  ・ジレットのジム・キルツのケース: マトリックス組織の垣根を越えた事業ユニットや地域ごとに運営委員会を設置
  ・インベンシスのリック・ヘイソンスウェイトのケース: 9つの顧客セグメントごとに戦略チームを設置し、部門を超えて人を集めた/事業全体にまたがる4つの領域(サプライチェーン、顧客開拓、サービス・デリバリー、プロジェクト・マネジメント)を仕切る専門家を雇用し、各領域での基準設定、分野を連携した改善の推進を行なわせた
 ④イニシアティブを引き出す →消極性と無気力を排除する
  ・BBCのグレッグ・ダイクのケース: 幹部に自らが責任者であり、現状を変えたいと思えば変えられることを気づかせた/アイデアの創造を職員全員に担わせる方向へ変革、ほとんどの提案に自ら目を通す
  ・インベンシスのリック・ヘイソンスウェイトのケース: 経営陣から社員へ「やりたいことを遠慮なく示してほしい」「独裁政治は終わった。各人が率先して行動を起こさなければならない」というメッセージ/9つの戦略チームごとに戦略計画を発展/社員自ら改善を実施するINVESTプログラムを粘り強く推進

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