良質な夢であるための条件 -Questions of Character(1)-

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Questions of Character: -Illuminating the Heart of Leadership Through Literature
Chapter 1: Do I Have a Good Dream?
Joseph L. Badaracco, Jr.
2006 HBS Press

夢はリーダーにとって致命的なリソースである。深遠な野心、人を惹きつけてやまないイメージが、彼らをして障害や困難を乗り越えさせるべく駆り立て、他人の野心や夢を巻き込んでいくのだ。しかし、リーダーの夢が誤ったものであるとき、本人や家族、組織にとって結果は悲惨なものとなる。Arthur Millerの劇作品The Death of a Salesmanでは、誤った夢を抱いてしまった主人公ウィリーの悲劇が描かれる。

Questions of Character 1: Am I Dreaming with My Eyes Wide Open?
実現されるべき夢と妄想とを切り分けるのは、世界と自分自身についてのリアリズムである。妄想的な夢は現実と向き合うことを妨げる。妄想に逃げ込むことによってつらい現実から目を背けることが出来る。実現されるべき夢と妄想、もしくは破壊的な空想とをどう区別すればよいか。作品から二つのことが学べる。
①第一に、欠陥のある夢は、頻繁に、力強く空気を入れ直さなければ萎んでしまう。現実に根ざしていないが故に、意図的にインフレを起こさなければ力を失ってしまうのだ。
②第二に、妄想的な夢は非常に儚いものである。そのため、そのような夢を抱える人は、現実に目を向けさせてくれる事実や言葉と向き合うことが出来ない。他方で、最も優れたリーダー達は、厳しい現実と実際の経験によって自分の夢を試し、強化していくのである。

Questions of Character 2: Which Dreams Will You Abandon?
よい夢は「選択」という困難な行為を要求する。数多くの夢によって引き起こされる葛藤は、エネルギーや時間の集中を妨げ、混乱をもたらすからだ。ウィリーの悲劇の1つは、彼が自分自身の本当に望むことを何一つ明確に意識することなく生きていたために、外部からのプレッシャーや自身の中にある衝動に対して非常に無防備だった点にある。また、過剰ないし過大な夢は、自分自身がそれまでに実際に成し遂げてきたことや現在自分が実際に手にしているものの価値を分からなくすることがある。
よい夢を知るための重要なテストは、その夢のために喜んで他の夢を犠牲に出来るかどうかである。どれほど才能に恵まれた優れたリーダーであってさえ、真に望むことを達成するためには、何かを犠牲にせざるを得ないのだ。

Questions of Character 3: Are These Really My Dreams?
ウィリーの最大の悲劇の一つは、彼の夢の多くが彼自身のものではなく、ありふれた大衆文化の産物であったことだ。我々は、どうすれば自分自身のニーズや経験から生まれた夢とそうでないものとを区別することが出来るだろうか。ウィリーの経験から3つのpracticalな方法を学ぶことが出来る。
The Love of Drudgery: 多くの成功した人間の自伝の示すところに拠れば、彼らは、他の人からすれば非常に難しいあるいはつまらないと思われるような物事に対して、一生涯続くような喜びを見出しているものだ。つまり、ゴールではなく、そのプロセスそのものに、それが例え他の人からは退屈な仕事に見えても、大きな喜びを感じるようなことにこそ、その人特有の価値、強み、そしてそれに根ざした夢が見出せるのだ。これとまったく逆の兆候は、プロセスをまったく楽しむことが出来ず、ゴールへの近道ばかりを探してしまうような行動傾向である。
Dead or Alive?: 健康的でない夢は、変化がなく、活気もないものである。ウィリーの場合は、若い頃に持っていた漠然とした夢が、そのまま形を変えることなく彼が自殺をする時まで持続していた。健康的な夢はまったく異なる。人が人生を生きていく中で、その夢もまた成長し、進化し、形を変えていくのである。
Really Listening: 私たちは自分で思っているほどには自分のことを理解していない。他者の方がよく知っていることがしばしばである。ゆえに、自分自身についてよりよく理解しようと思うならば、自分をよく知る人たちの話に心から耳を傾けることが必要不可欠である。

Questions of Character 4: My Dream or Our Dream?
組織やコミュニティ、家族の中で生きる人にとって、自分一人の孤独な夢は、自分を孤立させ、また、他のメンバーをも息苦しくさせてしまう場合がある。組織やコミュニティ、家族等の集団においては、夢は共有されることが望ましい。