トヨタ、ホンダの力

今、Operation Managementの最終プロジェクトで教授のコンサルティングのお手伝いをしています。僕らが自分たちでコンタクトした李錦記(Lee Kum Kee)というシーズニングの製造・販売企業が非常にガードが堅く、製造プロセスのデータはおろか工場の写真すら撮らせてくれなかったためです。教授に相談したところ、一つのオプションとして提示されたのが、彼の抱えている実際のコンサルティング・プロジェクトの下仕事を僕らがやるというものでした。リサーチものなのですが、かなり面白そうだったので僕らは飛びつきました。

なかなかdemandingで、「なんじゃいこりゃ」と言うような質問を11個渡され、それぞれすべての答えを考えた上で、とある企業がブラジルにoffshoringをすべきかどうかというreal issueに対するrecommendationを作ることになっています。合計800ページくらいの何の役に立つのかよく分からない本を始めとして、あれ読めこれ読めと「アドバイス」をくれちょっとムカつくところもありますが、今のところなかなか面白いです。

というわけで、今日はHBRのoutsourcingやoffshoring、SCM関連の論文を色々読んでいるのですが、改めて思い知らされたのがトヨタ、ホンダの実力でした。彼らが北米市場でいわゆるビッグスリーに大差をつけて市場をおさえている理由もむべなるかなという感じです。

ミシガン大の教授とアリゾナ州立大の教授が一緒に書いた論文があるのですが、これがかなり秀逸です("Building Deep Supplier Relationships", HBR, Dec. 2004)。日本人ビジネスマンなら全員読むべし、というくらい面白く、またinspiringです。

*もしご興味がございましたら、少し高いですがここから購入することも可能です。
要約も閲覧できます。

先週のオペレーション・マネジメントの授業中に教授が「系列」の話を出してきて、勝手にもはや昔の話、なんて思いこんでいた僕の頭の中ではピンと来なかったのですが、この論文を読むと、今でも相当に力を発揮しており、かつビッグスリーが真似しようとしたけど出来なかった、ということがよくわかります。教授が授業中に日本の製造業をよく誉めますが、どうやら念頭に置いているのはトヨタ、ホンダのようです。

この論文では、トヨタ、ホンダが北米大陸で展開している現代版系列について、6つの切り口から、かなり豊富な事例を添えて説明されています。簡単にそのポイントだけ紹介します。

1. Understand how your suppliers work.
2. Turn supplier rivalry into opportunity.
3. Supervise your suppliers.
4. Develop suppliers' technical capabilities.
5. Share information intensively but selectively.
6. Conduct joint improvement activities.

これらの事例を読むと、いかに彼らがサプライヤーとの間に長期的なwin-win関係を築いてきたかということがはっきりと分かります。人を重視することもさることながら、サプライヤーとの関係も大切にしている彼らの哲学がにじみ出ていて、かつての(今もそうかもしれませんが)日本企業の美徳を体現しているように思えます。少し誇らしい気分さえ感じます。

非常に勉強になりました。このプロジェクトがなければ多分一生読むこともなかった論文でしょう。偶然に感謝です。