バルジブラケット(上)

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巨大投資銀行(バルジブラケット)
黒木亮(ダイヤモンド社、2005年)

来た!黒木亮の新作、という感じで衝動的に買ってしまった本作、これまでの彼の作品の集大成という感じで非常に勉強になります。

主人公は元邦銀で30代半ばくらいまで働いた後、「モルガン・スペンサー」に転職し着々と出世していく男なのですが、あまりガツガツしておらず、奥さんも大切にする理想的な仕事マンです。ほんとにこういう人がIBにいるのかな、と思ってしまうところもありますが、おそらく黒木さんの理想像なのでしょう。

内容は、小説というよりも、80年代からのファイナンスの世界をめぐる大きな動きを実名登場人物も交えながら追っていく感じです。劇的なドラマはあまりありませんが、歴史的事実の裏側でどんなことが起きていたのか、という視点で楽しく読めます。特に、「外資」というととかく宗教的なアレルギーを抱いてしまう傾向の強かった日本ですが、具体的に外資系金融と邦銀で何が違っていたのか、明確にイメージできる点でも非常に興味深いです。

劇中「ソロモン・ブラザーズ」等の駆使する商品の仕組は未だにはっきり理解できていませんが、一度ちゃんと整理してみようかなと知的な刺激も与えられます。ほとんど興味のなかったM&Aに対する関心も湧いてきました。コーポレート・ファイナンスの授業でやっていることとも繋がっています。やはりこの世界は面白いですね。

本文だけで340ページもある相当分厚い本ですが、下巻も同じくらい。かなり楽しみです。教科書もこのくらい、ページ数が気にならないくらいに楽しく読めればいいのですが。。。