スチームボーイ、サックス?

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STEAMBOY スチームボーイ

19世紀、イギリス。
無限とも思われる程の量の圧縮された高圧蒸気を内に秘めたスチームボールを物語のキーアイテム「のようなもの」にしつつ、科学を己の力の追求のために利用しようとする人々と、人類の幸福のために用いたいと願う人たちとの間で繰り広げられる戦いを描いた物語です。

結論から言うと、詰まらない、でした。気分は、ニューヨークの友人の言っていた"STEAMBOY sucks!"と完全にシンクロしています。

途中で何度も見るのやめようかとまで思ったのですが、日本を代表するクリエイター(ですよね?)大友克洋氏の作品だから、と俗な気持ちが働いて結局最後まで見ました。

何で詰まらないと感じてしまうのでしょうね。
折角約2時間も投じたのだから、理由を分析して何かを得なければ、と思ってしまうのは貧乏性でしょうか。思いつく順番に並べながら考えてみたいと思います。

第一に、キーアイテムであるはずのスチームボールですが、実はあまりキーでもありません。これが足りなくても「スチーム城」はしっかり動いてるし、イギリス軍の兵器だってスチームボールを外しても何が変わったのかよく分からないくらい十分活躍していました。結局、「スチームボーイ」Rayをリトル・スーパーマンにするためのアイテムとしてしか機能していませんでした。だからあまり前印象ほどの劇的な効果はありません。

第二に、科学を題材にしたメインテーマのプロットは分かるのですが、いかんせん深みがありません。金儲けのためには何だってやっていいのか?科学は人の幸福のために使うべきであって、人殺しの兵器のために使われるべきじゃない!とか色々言ったところで、元々が使い回された陳腐なフレーズである上に、言ってる側からむちゃくちゃな規模での破壊と殺人がまったく生命の実感を伴わないままに進行しているために、まったく説得力がありません。少なくとも、まったく効果的ではありません。

第三に、オハラ財団の令嬢、スカーレットが意味不明です。これほど意味不明な軽い、中身のないヒロインには初めてお目にかかりました。金儲け至上主義で戦争も兵器の売買もまったく厭わない。それで一貫していればまだただの嫌なやつで通るのですが、人の死に触れた瞬間に「それはダメ」となる。それでいて大規模にロンドンの街が破壊されていること(壊滅的にです)にはまったく頓着しない。何こいつ?とひとかけらも感情移入できないキャラクターでした。

第四に、映像がすごいということでしたが、たしかにすごいのですが、ピクサーの仕事などと思い比べてみると、正直「すごい!」というほどではありません。専門家ではないのでどっちがすごいのかその真価はよく分かりませんが、印象の強さは圧倒的にピクサー作品です。この点でも強い印象が残ることはありませんでした。

第五に、こういうあまり印象的ではない諸々に囲まれているために、主人公のRayもまったく輝きません。

とりあえず今言語化出来る理由はこんなところです。散々な印象ですが、10年後とかにたまたまもう一度見たりすると新しい発見があるのかもしれませんね。。。