ムードの力

EQの高いリーダーが生み出す組織活力 Primal Leadership
ダニエル・ゴールマン
リチャード・ボヤツィス
アニー・マッキー
DHRB Mar 2002 (HBR Dec 2001)

ゴールマン氏のチームによる2年にわたる研究の結果、リーダーのムードやそれに伴う行動が最終的な業績に多大な影響を与えることが明らかになったそうです。リーダーのムードや行動が、チーム・メンバー全員のムードや行動を突き動かし、結果に大きな影響を与える、という流れです。

当たり前と言えば当たり前のような話ではありますが、私たちの脳の構造が有する特殊な機能がそのメカニズムの背景となっていることも示されており、なかなか説得力があります。その機能を「大脳辺縁系の開ループ的性格」と呼びます。

大脳辺縁系とは、これまでの記事でも何度も出てきたとおり、人間の情動をつかさどる脳の旧い部分に当たります。そして、この情動をつかさどる脳は、「閉ループ系」として自己調節を行なう機能と共に、「開ループ系」として外部の刺激によって調節を行なうという機能を有しています。そのため、人間のムードの相当な部分が他者との関係、周囲の人のムードによって決まる、というわけです。

さて、このような大脳辺縁系の開ループ的性格を通して、自分のムードが周囲の人のムードに大きな影響を与え、さらに最終的な業績に大きな変化があることを理解した上で、リーダーは自分自身のムードをマネージする能力が必要となるわけですが、ここで求められるのは、
①自己認識によって自分のムードを観察する(自己認識)
②自己管理によって良い方向に切り替える(自己管理)
③共感することで周囲への影響を正しく把握する(関係の認識)
④関わり方をうまく管理し、周囲のムードを高める(関係の管理)
という、まさにEQの向上です。

常に実践的であるゴールマン氏は、ここでもその方法論を示してくれています。ここでは詳細は省きますが、以下のような5段階のアプローチで構成されており、まさにコーチングのプロセスとシンクロしています。
1)理想の姿を思い浮かべる。明確にする。
2)周囲の目に映っている現実の姿を見つめる。フィードバックを得る。
3)理想と現実のギャップを埋める行動計画をつくる。
4)計画を実行に移す。
5)見張り役(change enforcer)を設ける。

ハリウッド
ハリウッド posted from フォト蔵
ハリウッド、チャイニーズシアター隣の小さなモールです。
二階のテラスからハリウッドサインが見えます。