EQリーダーシップ

引き続きゴールマン論文です。
これも、ていうかこれは、さらに素晴しい。

EQリーダーシップ Leadership that Gets Results
ダニエル・ゴールマン Daniel Goleman
DHBR Sep 2000 (HBR Mar-Apr 2000)

先ほどの論文の2年後に書かれたもので、EQに関する概念はさらに洗練されています。本論文の下敷きになっているEQは、「4つの基本能力」として次のようにまとめられており、さらに分かりやすく、かつコンパクトなものとなっています。

EQ 4つの基本能力

①自己認識
②自己管理(←動機づけもここに包摂)
③社会的認識(←共感もここに包摂)
④社会的技術

それぞれを構成する要素もさらに充実し、包括的なものとなっており、先の論文よりも、そして、「EQ こころの知能指数」で展開されたEQ論よりも優れていると思われます。

とはいえ、本論文の主眼はここにはありません。これを踏まえた上で、各要素の強弱によって生まれる「6つのリーダーシップ・スタイル」が本題です。「6つのリーダーシップ・スタイル」とは、筆者がリーダーシップ開発コンサルタントを務めているというコンサルティング・ファーム、ヘイ・マクバーによる4000人近い経営幹部対象の調査によって明らかにされたもので、それぞれが組織風土と業績に与える影響が明らかにされています。様々なリーダーシップ論をEQの視点からみた集大成のようなモデルで、非常に分かりやすく、かつ実効性が高いように思われます。

具体的には以下のようなスタイルを指します。

①強圧的リーダーシップ
「俺の言うとおりにしろ」

権威主義型リーダーシップ
*DHBRの訳語が正しいのかどうか分かりませんが、内容的にはビジョナリーなリーダーです。

③親和型リーダーシップ
「人間関係が第一」

④民主主義型リーダーシップ
「みんなの意見が大切」

⑤先導型リーダーシップ
「俺のするとおりにしろ。必死でついてこい」

⑥コーチ型
*部下の育成を重視するリーダーです。

ここで詳細に触れることはしませんが、それぞれのスタイルが、モチベーション、柔軟性等、組織風土の様々な側面にどのように影響を与えるか、そしてそれぞれがどういう場面で力を発揮し、どういう場面で機能しないか、について詳細に説明されており、非常に説得力があります。また、これ以上必要ないほどに包括的であると思います。ちなみに、①と⑤は調査の結果、組織風土を改善・強化する方向には働かないことが示されています。

なお、結論としては①〜⑥のいずれかが正しく、いずれかが誤っているということではなく、優れたリーダーとなるためには、これらのスタイルを使い分けられることが重要で、実際に優秀なリーダーはいくつかのスタイルを使いこなしているとのこと。

また、各スタイルを身につけるためには、自分のEQを高める必要があるわけですが、その方法論の例についても示されています。その核心は、前の論文と同じで、大脳辺縁系を教育しなおさなければならないため、強力なコミットメントと継続が必要である、とのことでした。

伊勢神宮
伊勢神宮 posted from フォト蔵
伊勢神宮の境内で撮った空です。