QuestionThinking

セルフマネジメントの授業で新たに追加された教科書。
非常に素晴しいです。
コーチングの重要なエッセンスがこれ以上ないくらい明快に示されています。また、セルフマネジメントの授業でこれまで学んできた内容をうまく統合的に把握するフレームワークを提示してくれています。英語の本を読んでこれほど感銘を受けたのは初めてかもしれません。

change your questions change your life
Marilee G. Adams
Berrett Koehler (2004)

本書で示されるQuestionThinkingというフレームワークは、「すべての結果を生み出すのは思考であり、思考を生み出す質問である」という考え方を基盤としています。そして、好ましい結果、好ましくない結果を生み出す質問・思考のあり方を、それぞれ、LearnerJudgerとしてモデル化しています。

例えば、長期にわたってうまくいっていないような人との関係のあり方というよくありがちな題材をネタに考えてみましょう。このような場合、私たちは、

「なぜあの人は私を嫌うのだろう?」
「私が何か悪いことをしただろうか」
「あの人の性格に何か問題があるのかも知れない」

等と言った考え方をしているかもしれません。これらの考え方、問いかけの背景には、誰が悪いのか?Who's to blame?という暗黙の質問が横たわっています。その結果、「自分は悪くない。相手が悪い。」あるいは、「自分が悪い。」といった一方的でネガティブな、思考停止状態に陥ってしまっているわけです。

このような、Who's to blame?やWhat's wrong with me?といった、自分自身を含む人や物事に対する価値判断、決めつけ、それに付随する思考停止、ネガティブな感情等に囚われている状態をJudgerと呼びます。

他方、何が起きているのだろう?私はどうしたいのだろう?関係を改善するためにはどのような選択肢がありうるだろう?と、価値判断や思考停止することなく、同じ事象に対して未来志向で対峙している態度をLearnerと呼びます。

そして、自分の言動に注意を払い、自分がJudgerになっていることに気づき、自らに別の角度からの質問switching questionを投げかけることによって、Learnerへと意識・態度をシフトする。これによって自分のeffectivenessを高めるor維持することができる。これが本書のメインメッセージです。

また、ここまではまさに「セルフ・コーチング」の視点ですが、チームマネジメントにおいてもLearnerの態度に立ち、良い質問によってチームのモチベーション、ハイパフォーマンスを導き出していく、という「コーチング・リーダーシップ」の視点も本書では語られています。本書ではこのようなリーダーシップ・スタイルを、Inquiry Leadershipと名付けています。

本書には、この短い記事ではとても書き切れないくらい刺激的で、有意義な内容があると思います。しかも、物語形式で語られるため、飽きることなく一気に読め、分かりやすいです。本気で翻訳して日本に紹介したいくらいです(そういうコネのある方是非紹介して下さい)!

というわけで、英語アレルギーのない方は是非読んでみて下さい。

勝浦?那智?
勝浦?那智? posted from フォト蔵
那智大社へつながるルートの熊野古道、その起点にある駅の側の海です。
結構きれいでした。