アジアの隼(下)

あっという間に読み終わりました。
やはり相当面白かったです。

黒木亮『アジアの隼(下)』(詳伝社文庫)

金融の現場を垣間見ながら、エンターテインメントとしても十分に楽しめる優れた作品だと思いますが、ポイントがいくつかあると思います。

①悦氏もコメントに書いてくれていましたが、やはり組織に限らず、その構成員も含めて邦銀vs外資の勧善懲悪という視点が色濃く、そこだけは若干鼻につきます。もちろん、同じ外資系でも登場人物によって受ける「報い」が異なっていて、そこはそれぞれの人物個人の問題ではあるのですが、少しだけ気持ちの悪い部分は残ります。

②とはいえ、(陳腐な表現で嫌ですが)グローバルに展開するプロジェクト・ファイナンスの現場を感じられること、通貨危機前後のアジアの様子に匂いがしてくるくらいのリアリティで触れられること、等々、相当勉強になることは間違いありません。小説エンロンのときもそうでしたが、巻末に専門用語集があるのも結構役立ちます。

③そして、これも黒木作品の特徴だと思いますが、必ず「仕事と恋愛/家族」というテーマが織り交ぜられます。大体オチはそこに持って行く展開が多いです。でもうまくまとまっているし、考えさせられることも多く、悦氏のコメントにあった「人生のバイブル」という感想もこの辺から来るのかなあと勝手に想像してみたり。多分、黒木氏ご本人が日々このテーマについて試行錯誤し続けながら金融の世界を生き抜いてこられたのでしょう。だからこそのリアリティがあります。

というわけで大満足の一冊でした。