スティーブ・ジョブズ 偶像復活 iCon Steve Jobs

いや、素晴らしい本でした。

読みながら猛烈にたくさん感じることがあり、とてもここに書き切れないくらいです。
本書は言うまでもなくスティーブ・ジョブズの伝記であり、カバーされているのは2005年1月のiPod Shuffle発表までです。

彼のことも、アップルのことも、そしてピクサーのこともよく分かっていませんでしたが、この本によって相当イメージが詳細になりました。また、この本はスティーブ・ジョブズというたぐいまれなる人の物語であるとともに、アップル、ディズニー、ピクサーといった世界でも有数の企業におけるドロドロの人間ドラマを描いたものでもあります。これまでこれほどの大企業ともなると、自分の意識の中でまるで機械か何かのように無機質な物としてイメージしており、例えば買収、M&Aなどについても極めて体温の低いものとしてイメージしていたのですが、随分イメージが変わりました。今では、どれほどエスタブった企業であっても、その本質は人間のドラマの集大成であって、温かい血の通ったものであり、不完全なものなのだと思うようになりました。スティーブを見ていると余計にそう思わされるのかもしれません。

ティーブ・ジョブズは、鼻持ちならない我が儘な自信家で、部下たちから隠れ、逃げられるほどの強力なマイクロマネジャーでありながら、自分自身のビジョンに人を巻き込み、信じさせ、大きなエネルギーを引き出す圧倒的なカリスマ性を持った人でした。また、圧倒的なビジョンとショーマンシップで聴衆を感動の渦に巻き込むプレゼンターでもあります。長きにわたってそのビジョンは誤りであることが多かったのですが、今はその天才性が遺憾なく発揮される時期にあるようです。しかし、今の彼の何よりの強みは、(あくまで本書によれば、ですが)自分自身だけを信じるのではなく、チームプレイの意味を理解し、成果を自分ひとりのものと考えず、メンバーの力を信じ、尊重するようになりつつあるところにあるのだと思います。

このような彼の変化を知った上で昨年6月のスタンフォード大でのスピーチを振り返るとなかなか感動が増します。結婚、子供を受け入れる準備が出来たこと、癌の診断を受け一度は死を覚悟したこと。これらも彼の変化に寄与しているのかもしれません。

また、本書を読んだ後に最新のアップル、ピクサーの動向を追っていくとなかなか楽しめます。特に、スティーブ・ジョブズがディズニーのCEOになったりしたら、アップルとピクサーとディズニーの持てるポテンシャルが融合して一体何が起こるのか、想像も出来ませんが、とにかく相当世の中にインパクトを与える、面白い何かが生まれることは間違いないでしょう。

そのほかにも諸々考えさせられましたが、とにかくオススメの一冊です。
500ページもある割りには一気に読めてしまう辺りもすごいです。