ADTとADD
東京で仕事をしていたときには当たり前のように思っていた、むしろ、よりうまくこなせるようにならなければ、と思っていたマルチタスキングですが、有能なマネジャー達をダメにしてしまったり不幸にしてしまったりするケースが増えているそうです。
("Overloaded Circuits" by Edward M. Hallowell, HBR Jan 2005より)
ADDという疾患があるそうです。ADHDとも呼ばれているようです。いわゆる、ハイパーアクティビティ。attention-deficit/hyperactivitiy disorderが正式名称だそうです。
ADTとは、attention deficit traitの略称で、ADDが遺伝的な要因によって形成される疾患であるのに対し、ADTは完全に外部的要因によって陥ってしまう状況を指します。また、ADDにかかっている人の多くが、他方で非常に高いIQを持ち合わせていたり、何らかの極端にpositiveな部分を持っているのに対して、ADTはそのネガティブな部分だけを集めたような状態であるそうです。
具体的にどういう状態なのか。一言で言うと、自分に寄せられるあまりに多い要求に応えようとする中で、脳がパニックに陥ってしまっている状況を指すようです。メカニズムは以下のようになっている模様。
①前頭前野の冷静な処理能力に基づいてマルチタスキングをやってるうちに、能力の限界を超えそうになる。
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②前頭前野が「やばい」という危機メッセージを扁桃核(deep centersと書かれていますが、多分扁桃核のはず)に発する。
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③扁桃核はサバイバルモードに突入し、身体全体に危機対応の指令を出すとともに、前頭前野から主導権を奪い、脳をハイジャックしようとする。
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④前頭前野はさらに仕事の処理能力を落とし、危機感を強める。
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⑤扁桃核はさらに強度の恐怖を感じ、コントロールを強めていく。
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この繰り返しで、ADTに陥ってしまった人は、まったくeffectiveでなくなってしまうそうです。たしかに、これまでの経験上でも何人かそうなってしまった人を見た記憶があります。
ただし、ADTは疾患ではなく、外的環境によって陥った一時的な状況に過ぎないため、このような労働環境から逃れることによって回復するようです。また、パニックに陥らないように自分自身が、あるいは組織的に、注意深く措置を講じることでもADTは避けられるようです。
この論文にも、ADTに陥らないように自分自身でコントロールするためのいくつかのtipsが書かれています。ストレスマネジメントやto build attentionの観点から非常に重要な視点の一つだと思います。自分自身で自分の限界をある程度知っておくとともに、そこに至らないためにコントロールする術を身につける。
また、よく言われる、
できる人はキャパシティがすごい。
マルチタスキングの達人である。
というのはたしかに真実であるし、ある程度マルチタスキングできなければ、なかなか仕事も十分にこなせないと思います。しかし、マネジメントの立場からすれば、無限のキャパシティや高度のマルチタスキング能力を誰に対しても求めるのは間違っているし、優秀な人=それができる/できなければならない、と考えるのも間違っているということだと思います。でなければ、貴重な人材を潰してしまう可能性もあるのではないでしょうか。
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伊香保 posted from フォト蔵
日本です。伊香保です。雪が懐かしいです。
カリフォルニアは冬でも夏まっただ中です。