意識の構造

Self-Managementの予習で読んだチクセントミハイ教授の1988年の論文(The floe experience and its significance for human psuchology)、半分くらいは既に読んだFlowGood Businessの内容と被っていましたが、もっと基本的な論点としていくつか面白い視点が得られました。

まず、チクセントミハイ教授の基本的なスタンスについて。心理学の諸学派の中での立ち位置と言ってもいいかも知れません。彼によれば、伝統的な心理学の主流による意識へのアプローチは、病理学的な観点から迫るか、もしくは、外的な刺激に対する受動的な反応としてとらえるか、そのいずれかがほとんどであったそうです。しかし、彼が立脚するのは、意識はもっと主体性を持った能動的な存在である、という立場。これに基づいて、主体的な意識による経験の質、その総体としての人生の質の向上を実現しようというのがフローの理論であるわけです。まだよく知りませんが、これがpositive psychologyという流れの基本的な考え方なのかもしれません。

そして、彼の議論によれば、この「意識」は以下のような3つの下位構造によって構成されています。


外部の情報、刺激

↓ ↑

①Attention: 集中、注意

↓ ↑

②Awareness: 思考、感情、認識、知覚

↓ ↑

③Memory: 記憶


①は情報を意識のスクリーンに採り入れる機能を果します。そして、②が採り入れられた情報の解釈を、思考、感情等によって行ないます。最後に、その結果や過程が③で貯蔵される。このような一連の情報処理システムが意識であると説明されています。

旧ブログで色々紹介しましたが、例えばautomatic reactionの場合は、ほとんど①を飛ばして②に進んだり、強い感情が生起してpsychic entropyが発生し一切の集中が妨げられているような場合は、おそらく②が意識をハイジャックし、①③の処理に必要となるpsychic energyがそちらに奪われ、集中もできないし、何かを記憶することもできない、という状態になるのだと思われます。

また、mindfulnessの重要性や、automaticityの危険性は、意識の入り口で取捨選択の機能を果している①の働きの重要性を考えれば理解しやすいですね。

上記のモデルを軸に、Managing FlowとSelf-Managementで学んでいることをうまくまとめられそうです。

なお、自我は、以上のような意識のプロセスの中で、意識が自分自身を知覚することによって生じる、単純に付帯的な現象であるとも述べられています。