複雑性のマトリックス Complexity Matrix

昨日のManaging Flowの授業は非常に有意義でした。
これまでの4回の授業の中で最も知的にexitingだったと思います。

まず冒頭で扱ったのが、complexity、「複雑性」とでも訳せばよいのでしょうか、Flow論の中でも中核をなす概念について、教科書には出てこなかったマトリックスを使ってpracticalに説明してくれました。


complexity matrix
complexity matrix posted from フォト蔵


このマトリックスは、個人に対しても使えますが、まずは組織の分析に使うという前提で考えてみましょう。

autotelicの概念については旧ブログの記事で何度か触れましたが、これは同時に、complexなステージであるとも定義されます(オレンジ色部分)。そして、differentiation、integrationの度合いが下がるにつれて、黄色部分へ移行し、どっちの要素も弱ければ、simpleのステージへ移行するわけです。

complexのステージが最も望ましく、組織のメンバーが最もフローを日常的に経験しやすい状態ということになります。このステージにおいては、個々人の業績や成長が強く求められつつも、組織としての統合性も十分に提供されています。例えば家族を例に挙げれば、両親が子供に、①しっかり勉強したりクラブ活動に力を入れて成長することを求めつつも(differentiation)、②同時に、愛情に満ち、サポーティブであり、家族としての一体感が非常に強い、というような状態です。

そして、当然企業等の組織においてもこのマトリックスは使えます。目標はautotelicのステージを実現し、維持することで、生産性とメンバーの経験の質を最大化することにあると思います。

授業中にチクセントミハイ教授に、企業でこれを使った実例や方法論を教えて下さいと聞いてみましたが、残念ながら実際の企業のカルチャーや置かれている状況によって千差万別であるため、一般化した方法論はないということでした。ただ、いずれの場合でもまずはこのマトリックスを使って現状を分析・評価するところから始めるようです。その上で、例えば、

(1) Over-Differentiatedの状態にあると考えられる場合、①企業のミッション、ビジョン、戦略、事業目標等を明確にし、豊富なコミュニケーションを通してメンバーに浸透させる、②日常的なコミュニケーション量を増やし、メンバーの一体感を高める、等々、integrationを高める方向での調整、変革が必要になると思われます。

(2) 他方、Over-Integrationの状態にあると考えられる場合には、①個々人の業績をしっかりと図るスキームを構築する、②個人の成長を促進するような評価システムの導入、コンピテンシーの定義、等々を進める必要があると思います。

いずれの場合でも、strategic、cultural両面からのアプローチが必要になると思います。また、注意が必要なのは、ある組織が恒久的にどれかのステージに止まり続けるということはなくて、新メンバーの加入、事業環境の変化等によって、常にマトリックスの中を移動し続けるということです。常に最高の生産性と最高の経験を保証する組織であることを願うならば、絶えず組織のいる場所を確認し、改善の手を打っていく必要があります。

てな感じで、非常にパワフルなフレームワークだと思います。

このマトリックスを基本的な分析フレームワークにしつつ、旧ブログの記事で書いたフローをもたらす条件を満たすような施策を組み合わせれば、complexityとflowを統合的に採り入れたツールが創れるのではないかと思っています。パワーポイントでまとめて教授の所へ持っていってみようと思います。

昨日の授業では、その他にも色々吸収したこと、考えたことがありましたが、また追って別記事でupしたいと思います。