イノベーションとマネジメント
MBA最新テキスト アントレプレナー・ファイナンス―ベンチャー企業の価値評価とディール・ストラクチャー
- 作者: リチャード・L.スミス,ジャネット・K.スミス,Richard L. Smith,Janet K. Smith,山本一彦,岸本光永,忽那憲治,コーポレートキャピタルコンサルティング
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2004/05/01
- メディア: 単行本
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最後に、多くの場合、アントレプレナーの担う役割とベンチャー企業の経営者の役割を分離することは可能であると述べておく。イノベーションによって付加価値を生み出す事業機会を見いだす能力と、その事業機会に投資することが目的のベンチャー企業を経営する能力とを兼ね備えた人材は、そもそもまれである。最初から入念に計画しておけば、単にアントレプレナーが日常業務の管理に不向きな理想家であったという理由だけで、ビジネスが失敗に終わる事態を確実に避けることができる。(p.19-20)
この短いフレーズから、「イノベーションとマネジメントの能力を兼ね備えた人材はそもそもまれである」という考えから、かなり色々なことを思いついた。とりあえず後々の検討のためにメモしておこうと思う。
- 投資家の観点からすれば、起業家が「イノベーション」を起こす才能を持っているかどうかに加え、彼もしくは彼女を支える右腕に卓越した「マネジメント」の能力、経験が備わっているか否か(あるいは起業家が双方を兼ね備えているかどうか)が重要な投資判断の基準の一つになる。
- もし優れた「イノベーション」の可能性は存在しているが、「マネジメント」が弱い場合、これを補う人材を外部から登用してくることが可能かどうか、これが次に考えるべきことになる。
- 「イノベーション」と「マネジメント」の視点はベンチャーだけでなく、規模の大きな企業でも重要。①例えば、各事業部門において、リーダーが両方の機能を兼ね備えているか、リーダーシップ・チームが互いに補い合える形になっているかどうか、が事業の成否を分ける一つのカギになる。②企業のトップマネジメントにおいても同じで、ただただ突飛もない(ように見える)innovativeなアイデアを生み出す能力しか持たないトップと、イエスマンばかりのトップマネジメント・チームで経営陣が構成されている企業は「マネジメント」の欠如によっていずれ崩壊する。ここでも両者のバランスが必要。
- 大企業ではさらに、「イノベーション」機能はより現場に近い組織に存在していることが多いのではないか。その場合、上位の優れた「マネジメント」がうまくボトムアップでアイデアを吸い上げていくことが、両者のバランスを維持・向上するカギになるのかもしれない。