それは甘えに過ぎない。
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/05/10
- メディア: 文庫
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サイトウは週に二回から三回わたしに会いに来た。わたしに会うために、ホテル代も含めると一ヶ月に三十万から四十万近いお金を使っていることになる。そんなにお金を使ってだいじょうぶなのかと聞きたかったが、そのことも聞かなかった。相手が意志と好意でやっていることについて、どうしてそんなことをするのかと聞くのは甘えだ。あなたが好きだからやっているんだよ、と言って欲しいからそう聞くのだ。幼児と一緒にいるとそのことがよくわかる。(「空港にて」p.172)