企業責任のFive Stages論
とあるNGOについて調べようと思ったら、以下の記事がうまくシーサーからimportされていないことに気づいたので再掲します。なお、このフレームワークによれば、先日ご紹介したGEの新たな戦略は、第4段階"Strategic"から第5段階"Civil"の間くらいの位置にあると言えるのでしょう。
[以下、再掲]
"The Path to Corporate Responsibility"
Simon Zadek; HBR December 2004
テーマは企業の社会的責任。Simon ZadekというロンドンベースのAccountAbilityというNGOのCEOが書いたもので、Nikeを筆頭に、様々な企業のケースを挙げながら非常に興味深いフレームワークが示されています。このNGO自体も面白い活動をしているようなのでいずれ調べてみようと思います。
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[Essence]
筆者によれば、企業の社会的責任を論じるときには2つの次元がある。第一は、企業自身のactionに関する5つのステージ。第二は、4段階で捉えられるイシューの社会的な成熟度。
1. The Five Stages of Organizational Learning
まずは企業の行動の5段階論について。
①Defensive: 社会的責任を問われるような事実自体が起きていないと主張したり、そのような事実があったとしても自社のビジネスとその事実とは関係がないと主張する段階。
②Compliance: 政策レベルでの規制に受動的に対応する段階。この段階では、social responsibilityを果すことが単なる「コスト」として認識されている。それゆえ、規制の限度を超えてactionを取ることもない。
③Managerial: complianceを確実にするため、ビジネスのコア・プロセスにいるマネジャー達に企業の果たすべきsocial responsibilityに対応した責任をきっちり負わせていく段階。依然として「コスト」として捉えられている点では②と変わりがない。
④Strategic: social responsibilityを果すために行動を取ることが、競争優位を生み出す源泉となることを学び、これを企業戦略に組み込んでいく段階。
⑤Civil: 自社だけでなく、他の会社・組織等を巻き込み、求められるsocial responsibilityに沿った集合的な行動を取るようになる段階。放っておけば課されてしまう規制を避けるために同一産業内で自主的に改善を行なっていくというpassiveな動機による場合もあれば、未来の企業の果すべき社会責任やグローバル社会の安定と開放性そのものを目標にするようなactiveな動機による場合もある。
2. Social Learning (Issue Maturity)
次にイシューの成熟度に関する4段階論について。
ア)Latent: 活動家のコミュニティやNGOは問題の存在に気づいているが、科学的その他の証拠に乏しい段階。ビジネス・コミュニティからは無視されている。
イ)Emerging: 政治やメディアの知るところとなりつつあり、急速に調査が進みつつあるが、データはまだ不足している。一部の企業は問題にどう対処すべきか行動を取り始めている段階。
ウ)Consolidating: 訴訟も起こり、また規制立法の必要性があるという見方が大勢になりつつある段階。自主的な規制基準が作られ、また業界内の協働も見られる。
エ)Institutionalized: 法律もしくはビジネス上の規範が確立された段階。
3. The Civil-Learning Tool
以上2つのフレームワークを組み合わせて提示されているのが、Civil-Learning Tool。ここではうまく再現できないけれど、敢えてやるとこんな感じになる。
(Organizational Learning)
⑤
④ /
③ /
② /
①/
ア イ ウ エ (Issue Maturity)
線より上の部分が安全、もしくは競争優位に立てる「かもしれない」Green Zoneで、線より下の部分がsocial responsibilityを激しく問われる蓋然性の高いRed Zone。自社や他社の特定社会問題に関する立ち位置を分析する上で非常に使いやすく分かりやすいツールだと思う。
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本文中では、フレームワークを提示した上で、Nikeが①→⑤へと至る事例が詳しく説明されています。その他にもたくさんの企業の例が紹介されており、面白いです。これを読む限りではAccountAbilityというNGOは単に企業を批判する団体ではなく、social responsibilityに対応するためにどうすればよいかという視点で企業にコンサルティングをしているような存在であるようです。いずれにせよ面白そうなので調べてみなくては。
①〜⑤にしても、そのほとんどはissueに対するpassiveな対応の結果ではあり、急進的な人からすれば結局コストの問題なんじゃん、ということでビジネスに対する批判的なperspectiveを強化する結果になるかも知れません。僕も多少そう思わないでもありません。
しかし、この論文中のコラム("Being Good Doesn't Always Pay")でも指摘されていますが、social responsibilityを果しつつ利益を上げる=社員を食わせるというのは相当チャレンジングな目標であると思います。そんなbattle fieldで自分に何かできることはあるのか?やりたいことはあるのか?引き続きしっかり考えていきたいと思います。