鮮やかに青い海

任天堂ソニーの次世代ゲームコンソール市場での戦いを見ていると、いつも決まってあることを思い出す。それは、任天堂はチャン教授のブルー・オーシャン戦略を地で行っている好例だなあ、ということ。と、思ってたらIDCが随分前にそういう分析をしていたようだ。

というわけで、別に新しくとも何ともない視点なのだけれど、自分の整理のために少しメモにしておきたい。


一言で言うと、従来のコンソール戦争は、「ゲーマー向けにより性能の高いハードを作るべし」というのがメインコンセプトだった。任天堂の場合だと、
  ファミコン →スーパーファミコン →Nintendo64 →ゲームキューブ →Wii
  ゲームボーイ →ゲームボーイカラー →ゲームボーイアドバンス →DS(?not sure)
という感じだったと思う。他方、ソニーの場合、
  プレステ →プレステ2 →プレステ3
という感じ。


いずれの陣営も、途中でコントローラーに名前は知らないけれどグリグリ回せるスティックを付けてみたり、バイブで振動する機能を付けてみたり等、工夫はしていたけれど、「ゲーマー向けにより性能の高いハードを作るべし」というコンセプトは変わっていなかった。そして、20年もの間、血みどろのレッド・オーシャンでの戦いを繰り広げてきたわけだ。


ここで鮮やかに青い海に抜け出したのが任天堂だ。彼らはゲームのルールを変えてしまった。新しい市場セグメントを創りだしてしまった。しかもニッチではない。そして、今のところこのルールに従って競争を挑んでくるcompetitorは存在していないため、任天堂は悠々と青い海を泳いでいる。そして多分、当面は泳ぎ続けられるだろう。


少し、その転換点となったDSとWiiのブルー・オーシャン的な特徴について見てみよう。

DS
○ディスプレイ×2
○タッチペンの使用
PSPのような高画質、高機能は追求しない。
 ただし、かつてのNintendo64ばりの処理能力はあり。


Wii
○ラケットや剣のように振り回して遊べるコントローラー
 cf. ソフトウェアラインナップ映像
○オペラ開発のブラウザと専用サイト
PS3のようなハイパフォーマンスは追求しない。
○かつての任天堂ハード+αのゲームをダウンロードして楽しめる。
○ソフトの開発コストがそれほど高くない


ソニーPS3が本質的にPS2の超バージョンアップ版でしかないこと(少なくとも、今のところはそう見える)に比べると、任天堂の進んでいる方向がいかに革新的なものであるか明らかになると思う。例えば、
・一人ではなく、みんなで楽しめること
・従来のゲーマー層の要望にも応えられること
・遊び方の新奇性
・ソフト数の充実
・ハードの性能
・価格
という単純な6つの競争要因で戦略キャンバスを書いてみれば、PS3XBox360、さらに従来のすべてのハードとは相当異なる価値曲線が見えてくるだろう(そのうちやってみます)。


考えてみれば、もはや名前も覚えてないし実際に触ってみたこともないけれど、かつて任天堂ゲームボーイの後継機的な扱いで、3Dディスプレイのゲーム機を出したことがあった。それもブルー・オーシャン的な考え方の先駆だったと言えるかもしれない。ただし、その当時はより高性能のハードだけが求められていた時代だったために、失敗に終わったけれども。


そう考えてみると、ブルー・オーシャン戦略と言っても、単にまったく異なる価値曲線を描く新しい市場を追求すればいい、というだけではなく、既存のレッド・オーシャンの成熟度を見極め、適切なタイミングを掴まえることも重要だということが言えるだろう。


【参考サイト】
Wii:12月2日発売、2万5000円 任天堂[毎日]
任天堂:次世代ゲーム機Wii…PS3と戦略の違い際立つ[毎日]