イエローカード

旅行第4日、グランドキャニオンからラスベガスへの帰り道、往路とまるで違って快晴。同じフリーウェイを逆行して帰って行く。車を日常的に運転するようになったのはアメリカに来てからだが、ゆっくり走るのがあまり好きでなく、結構いつも飛ばしていた。特に昨年末にLA〜SFを往復し、100マイル以上で走り続けても捕まらなかったという「実績」を得てからは、スピード違反で捕まることなどないのだ、という間違った自信を培ってしまっていた節がある。

しかし、やはり世の中それほど甘くない。

出発直前にNが「スピード違反に気をつけてね」と言ってくれていたのも、思えば何かの啓示(笑)だったのかもしれない。


WilliamsでI-40 Westに乗り換えてから、いつも通りひたすら飛ばしていた。制限速度75MPHだから、+15で90MPHくらいまで大丈夫だろうという訳の分からない理屈で飛ばしまくっていた。みんなもそれほどゆっくり走っているわけではないから、特に追い抜き時にはどうしても100MPHを超える。時速160キロだ。

気づいたら後ろにハイウェイパトロールがいた。

これは本当に怖かった。サイレンも鳴らさず、しばらく後ろに付いてくる。その時点で90MPHを超えていたが、ぴたっとくっついているのでブレーキも踏めず、アクセルから足を離し、エンジンブレーキの利きにすべてを託した。永遠のように感じられた一瞬の後、けたたましくサイレンが鳴り始める。もしや、クリミナルを追いかけてるのかな、なんてアホな甘い考えが一瞬頭をよぎりつつ、右に車線変更してみる。当然ついてくる。ああ、これはどうやら僕ですね、と観念して路肩に停めた。


アリゾナ州の法定速度は85MPHだ。
君は今88MPHで走ってた。
85MPHを超えると私には君をjailに送る権限がある。
だから停まってもらった」


と若いハイウェイパトロールの兄ちゃんが宣告する。

え?
ちょっと待って?
その「だから」(So)ってどこにかかってるの?
もしかして「jailに送る」?
初めてのスピード違反で留置所行きですか!?

一瞬猛烈に危機意識が芽生えたが、免許証だの、保険だの、登録証だのを提示しながら、意外にも冷静に少しずつ相手の出方を探るのだった。留置所なんて冗談じゃない。けど悪いのは自分。相手を刺激しないように、努めて信頼できる人間であるかのように振る舞う(笑)。

車を降りてパトカーまで連れて行かれ、彼は本部?に報告したり、報告書を書いたりしてたが、結局は「今回は警告だけだ。君はラッキーだったな。別に何も作業もしなくていい」と言われ、無罪放免。そうか、グランドキャニオンに行ってきたのか。いいところだっただろ?仕事は何をやってんだ?学生?何を勉強してんの?と雑談に花も咲き、「実はこの人暇だったんじゃ。。。」と不謹慎な思いも一瞬よぎったが、とりあえずほっとした。


その後は改心し、他の人の流れに合わせ、80MPH以上は基本的に出さないチキン野郎safe driverと化したことは言うまでもない。


今回の旅でフリーウェイでの運転について思ったこと。

第一に、各フリーウェイに掲示されている制限速度自体に厳密に従う必要はもちろんなくて(←誰も守ってないし、ポリさんにもこの点は特に何も言われず)、交通の流れに従うことが重要だということ。この点に気をつければ目を付けられることはない。目を付けられなければ、パトカーに搭載されているレーダーでスピードを測定されることもない。調子に乗って追い越しを繰り返して、「俺イケてるかも〜。みんな遅いねえ」(←バカ)なんてガンガン走ってると下手するとjail行き。

第二に、ロス周辺の道が一番汚くて、運転マナーも悪いということ。多分、この街で運転に慣れれば、基本的にどこに行っても困らないんじゃないかと思った。


というわけで、今回の旅の収穫の一つは、安全運転に目覚めたことだった。Hopefully。Probably。