マーカス流リーダーシップ&マネジメントの本質

The One Thing You Need to Know

The One Thing You Need to Know

PART I The One Thing You Need to Know
Sustained Organizational Success


CH2 Managing and Leading: What's the Difference?


第1章から随分間があいてしまいましたが、ようやくワン・シングの第2章。かなり名著の予感がしています。


本章は、第一部のテーマである偉大なマネジメントと偉大なリーダーシップの議論の論理的前提として、マネジメントとリーダーシップの定義が行なわれている。内容は実に大胆だ。ここまで大胆な定義付けは見たことがない。が、非常に的確に本質を突いていると思われる。

筆者によれば、マネジメントとリーダーシップの本質は以下の通り。

マネジャーのスターティング・ポイントは、個々の従業員である。マネジャーは個々の従業員の才能、技術、知識、経験、そして目標のパレットにしっかりと目を向け、それらを部下たちがそれぞれに成功できるような個別具体的な未来を描くために用いるのだ。部下の成功がマネジャーの焦点なのである。(p.70試訳)

リーダーの物事を見る目はマネジャーとは異なる。彼らは未来のイメージからスタートするのだ。より素晴しい未来のイメージこそが、リーダーが話し、考え、思いをめぐらし、描き、高めていく対象なのだ。リーダーは、このクリアなイメージだけを心に抱き、結果として彼らが成功することになるであろう彼のビジョンの実現に向け、部下たちを説得しようとする。そのプロセスのすべてにおいて、その将来像がリーダーの焦点なのである。(p.70試訳)

つまり、偉大なマネジャーは部下の成長と成功に限りない情熱と喜びを見出し、責任を持つ存在である。他方、リーダーは、よりよい未来の強力なヴィジョンを心に描き、その実現に向けて人々をつき動かしていく存在なのである。That's it、ピリオドだ。そう、それだけなのだ。それ以外には、リーダーシップとマネジメントの本質はない、とマーカス氏はいう。なんと大胆な定義付けだろうか。

彼からすれば、イニシアティブ、創造性、勇気、インテグリティという、リーダーの持つべき要素としてよく上げられる各種の"right stuff"もリーダーの定義付けの要素にはならない。なぜなら、これらはリーダーだけでなく、我々全員が持つべき理想的な要素であり、リーダーを定義づける固有の要素ではないからだ。


色々なリーダーシップ論やマネジメント論を読み、自分なりにフレームワークの作り方を検討してきたが、マーカスの議論には極めて強力な説得力があると思われる。彼のフレームワークに沿えば、リーダーシップとマネジメントの議論について、以下のようなくっきりした線を引くことができるのではないかと思う。

①マネジメント固有の機能
②リーダーシップ固有の機能
③その他、ハイパフォーマーが共通して持つべき特質、スキル


このフレームワークの詳細については引き続き検討し、どこかでまとめたいと思うが、とりあえずマーカスの議論を追っていこう。第3章以下も非常に楽しみだ。