フラット化する世界への企業の対処

フラット化する世界(下)

フラット化する世界(下)

第四部 企業とフラット化する世界


第11章 企業はどう対処しているか


筆者は、企業のベストプラクティス的な対処法について、7つのポイントを指摘している。それぞれのポイントに一つずつのケースが提示されているだけで、十分に検証されているものではないけれど、なかなか面白い指摘が多い。ケースも印象深いものばかりだ。


(1) 世界のフラット化に押しつぶされそうになったら、壁をつくってそれを防ぐのではなく、自分自身を変革する。

・マルチメディア制作会社グリーア&アソシエーツのケース


(2) フラット化する世界のテクノロジーを速やかに活用し、小企業であっても遠慮せず堂々とベストプラクティスのシステムを構築し、競争優位を築く。

筆者の言葉をそのまま使えば、「小は大を演じるべし・・・・・・大物ぶるのが、フラットな世界で小企業が反映する一つの方法だ」ということになる。

・「アラブ諸国で初めて設立された小荷物配送業者で、ナスダックに上場された最初の、そして唯一のアラブ系企業でもある」アラメックスのケース


(3) 大企業はテクノロジーを活用し、消費者が「自ら決定する」サービス形態に移行する。

これも筆者の言葉で言えば、「大は小を演じるべし・・・・・・顧客が大物ぶるように仕向け、自分は小物として振る舞うすべを身につけるのが、大企業がフラットな世界で反映する一つの方法だ」ということになる。もう少し具体的には、

大会社が小を演じるとは、一人一人の消費者に狙いを定め、個々の消費者にサービスすることではない。そんなことは不可能だし、コストも途方もなく高くつく。では、どうすればよいだろう?可能な限りビュッフェ形式でビジネスをやるのだ。そういう企業は、客の一人一人が、それぞれのやり方で、それぞれのペースで、それぞれの時間に、それぞれの好みに応じて自分でサービスできるプラットホームをこしらえたことになる。なんと、客に従業員になってもらい、そのうえお楽しみの代金を払ってもらうのだ!(p.228)

例に挙げられているのは、スターバックスとEトレードのケースだが、オンラインバンキングをイメージすると一番分かりやすいだろう。


(4) 優良企業は、企業内・企業間における優良共同作業者でなければならない。

・アップルのケース
ロールス・ロイスのケース

ここで筆者は面白いことを指摘している。引用しておこう。

シリコンバレーベンチャーキャピタル接触して、新しい会社を興す計画だが、アウトソーシングやオフショアリングはいっさいしないと話したら、即刻お引きとりをといわれるだろう。いまのベンチャー投資家たちは、会ったその日に、世界中にいる最も頭がよくて有能な人々と共同作業を行なうために三重の集束を利用するつもりがあるか、と質問する。ゆえに、フラットな世界では生まれつきグローバルな起業が増えているのである。(p.236)

いまでは、複数の知識労働チームの専門分野を融合させるのが、ビジネススクールを出て最初に任される管理業務かもしれない。三分の一がインド、三分の一が中国、あとはパロ・アルトとボストンが六分の一ずつという具合だ。この管理業務には、きわめて特殊なスキルが必要になる。今後、フラットな世界では需要が高まるだろう。(p.237)


(5) 絶えず自らの強み、弱みを見直し、強みを強化するとともに、弱みをアウトソーシングする。

IBMのビジネス・コンサルティングのケース
・HPがインド銀行からバックオフィス業務に関する「アウトソーシング」を受けたケース


(6) 優良企業は縮小するためではなく、節約のためでもなく、勝つためにアウトソーシングする。

・LRNとマインドツリーのケース


(7) アウトソーシングは利益を追求する者だけでなく、理想主義者にとっても有効である。

カンボジアでデータ入力のアウトソーシングアメリカ企業から請け負うデータ・デバイド・デジタルのケース