EQリーダーシップ

EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方

EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方

EQ こころの知能指数」で有名なダニエル・ゴールマンによるリーダーシップ論です。リーダーにとってEQがいかに大切か、ということを大脳辺縁系の開回路性に基づいて説明し、EQの使い方によって異なる6つのリーダーシップ・スタイルを紹介する第一部、EQの高いリーダーとなるための、あるいはEQの高いリーダーを育てるための方法論について論じる第二部、集団におけるEQという概念を説明し、それを高める方法について論じる第三部、という構成になっています。


以前の著作から一歩進んで、自己認識、自己管理、社会認識、人間関係の管理という4つの領域にすっきりと統合された「EQコンピテンシー」と、ビジョン型、コーチ型、関係重視型、民主型、ペースセッター型、強制型、という6つの「リーダーシップ・スタイル」(以前ご紹介した論文と基本的に同じものです)について論じる第一部は、数多くあるリーダーシップ論に関する本の中でも、飛び抜けて大きな価値を持つ論考であると思います。


また、理想の明確化、現実の認識、学習計画の策定、試行錯誤と反復練習、サポートしてくれる人間関係の構築、という「5つの発見」に基づく学習・教育プロセスを提案する第二部も秀逸です。先日ご紹介したフラーティの著作でも示されていましたが、この段階的なプロセスは成功するコーチングがたどるパターンと一致しており、実践的に有効であることは事実上実証されていると言えるのではないでしょうか。


やや残念なことは、第一部、第二部に比べると、第三部の充実度が下がる部分です。個人のEQの総和を超えて、集団(チーム、組織)における規範や文化によってもたらされる集団固有のEQの存在を指摘している点は非常に興味深いのですが、個人にフォーカスした第一部、第二部に比べると記述が浅いことは否めません。今後さらに研究が深まることが期待されます。


しかし、間違いなく、総合的には、リーダーシップに関心のある方は手にとって損のない良書であると思われます。