リーダーになる極意

リーダーになる極意

リーダーになる極意

本書は日本を代表する経営者たちへのインタビュー記事と、リーダーシップ論の2つの部分からなります。前者が特に素晴しく、「日本にもこんなに魅力的な経営者たちがいるんだ!」と感銘を受けつつ読みました。登場するのはベテランも若いリーダーもひっくるめて18名ですが、例えばCCCの増田社長、セコムの飯田顧問、インスパイアの成毛社長、ファーストリテイリングの玉塚社長、日本サッカー協会川淵キャプテン富士ゼロックスの小林会長等々、錚々たるメンバーです。1人1人の経験、物語が非常に濃く、勉強になるとともに、大いに刺激されます。本文全326ページのうち、実に206ページをインタビューが占め、非常に読み応えがあります。


本書を読んでいてふと思い出したのが『プロ論』でした。本書の前半部分は、経営者版プロ論と言ってもよいかと思います。プロ論が専門家としてのプロフェッショナル論、という趣が強く、「これからは自分の好きなことを追求し続け、その分野で誰よりも秀でた力を身につけた人が成功するのだ」という議論がほぼ全編を支配していたのに対し、本書は、リーダー、特に経営者としての資質を問われ続け、考え続けて来た人の物語が語られており、視点は非常に異なっています。1人1人で強調する点が異なっているために十把一絡げに言えないのですが、『プロ論』で提示された専門家志向の哲学とはかなり異なっています。読み比べてみると面白いかもしれません。


残念ながら、後半のリーダーシップ開発に関する議論については、様々な調査結果や既存の理論を少量ずつ切り貼りしているような印象があり、ガツンと来るような内容ではありませんでした。おそらく紙幅の都合上やむを得ない形なのだとは思います。いずれにせよ、前半だけで読む価値は大いにあると思います。