リーダーシップ論 -いま何をすべきか

リーダーシップ論―いま何をすべきか (ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス経営論集)

リーダーシップ論―いま何をすべきか (ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス経営論集)

コッター教授によるHBR既出のリーダーシップ関連の論文を8編、書き下ろし1編を加えてまとめたものです。いくつか面白いものがありました。


第1章 リーダーとマネジャーとの違い
原題は"What Leaders Really Do"、1990年の論文です。渡米当初は、このリーダーとマネジャーを分けて考えるアメリカの捉え方にとまどいがありましたが、今は、「リーダーシップ」、「マネジメント」、「リーダー」、「マネジャー」の4つをきちんと分けて捉えることで非常にすっきり理解することが出来るようになりました。本論文は、特にリーダーシップとマネジメントの違いを理解する上で非常に有意義なものだと思います。


第2章 人を動かすパワーをどう獲得し行使するか
原題は"Power, Dependence, and Effective Management"で、1977年という相当に古い時期の論文です。「パワーを獲得する」などとというとどうも胡散臭い、政治的な印象を受けてしまいますが、内容は、マネジャーが部下その他の関係者との関係で必然的に負う相互依存性を前提に、いかに効果的に人に動いてもらうかという重要な論点が論理的に分解して示されています。仕事上の経験で暗黙的に理解・実践してきた内容について、きれいに言語化・整理されている形で見直していくような感じで楽しめました。リーダー、マネジャーの仕事について体系的に考える際にも外すことのできない視点だと思います。


第3章 上司をマネジメントする
原題は"Managing Your Boss"。1993年の論文です。内容的には、「上司との関係を効果的にマネージするには」といった感じで、端的に言えば上司を理解し、自分自身を理解し、相互に最適な関係を構築するべし、ということなのですが、理解すべきポイントについて、組織的及び個人的な目標、感じているプレッシャー、仕事のスタイル(ミーティング、意思決定、情報収集等)、得意分野と弱点、期待、等々具体的に論じられている点が有益であると思います。


第4章以下は、コッター教授の得意な8段階プロセスや、変革への抵抗にどう対抗するか、といった話になりますが、これらについては「企業変革力」("Leading Change")「企業変革ノート」("Heart of Change")を読んだ方がはるかに勉強になると思います。