プロになるための経済学的思考法

プロになるための経済学的思考法

プロになるための経済学的思考法

これも一気に読みました。元々友人に紹介してもらったものなのですが、相当いいです。これからの日本のあり方、そして、これからの自分自身の生き方を真剣に考えるいいきっかけを与えてくれる書として、是非一人でも多くの方に読んでいただきたいなと思えるものです。


内容は、三篇ほどサマリーに書いたとおり、まずはマクロ経済の視点から日本の置かれている危機的現状がきわめて明快に、それでいてシンプルに描かれます。「経済学的思考法」と大上段的なタイトルにはなっていますが、マクロ経済なんて触ったこともない人でも十分に理解できる内容に工夫されている気がします。そして、今私たちが、特に若い世代が新しい日本という国のあり方を考え、つくっていかなければならないのだと結びながら、第2部のミクロ経済的視点へ移っていきます。第2部では、歴史的な段階を追いつつ、日本企業の強みが何だったのか、そして、いかにそれが今弱みへと転じつつあるのか、という現状が描き出されます。具体的には、日本式コーポレートガバナンスの強みと弱み、長期的信頼システムが強みを発揮している自動車産業等の一部分野と競争力を加速度的に失いつつあるモジュール化が進む分野の対比等に言及しつつ、最終的にはグローバル化の進展する中で日本企業の競争力の源泉は日本文化そのものに求めなければならないと論じ、第3部の文明論的視点へとつながれます。第3部では、歴史的事実を踏まえた上で、「中空構造」をコアにした日本人の特徴とそれに根ざした強みが明快に論じられます。ここでのメインメッセージの1つは、これからの日本人は、自らのアイデンティティをはっきりと自覚し、教養を身につけ、世界に対して独自の価値を示していかなければならない、というものです。


本質的には筆者の憂国の想いがほとばしる警世の書であると言えますが、日本を代表する経済学者らしく、きわめてロジカルに語られています。また、よくあるような批判的に言いっ放しな内容ではなく、きわめて概括的ではありますが、今後私たちが考えていかなければならないことの方向性も示しています。何より、若い世代に対する期待が強く込められていて、読んでいて清々しい気分を感じるとともに、奮い立たされるような内容でもあります。


爽やかな文体でありながらも中身が濃く結構読むのに気合いは要りましたが、読後感は非常に素晴しいです。今後色々考え、勉強する上でのよい土台にもなりました。紹介してくれた友人に心から感謝です。