変革の核心 -The Heart of Change(1)-

ジョン・コッターの企業変革ノート

ジョン・コッターの企業変革ノート

序章 変革の核心


変革の核心は、戦略や構造、企業文化や制度ではない。人々の行動を変えることである。行動を変える上で何より効果的なことは、人々の心に訴えることである。変革に成功した事例では、理性だけでなく、感情に訴える形で問題点や解決策に気づいてもらう方法を探し出している。そして、感情の変化が行動の変化につながり、大規模な変革に伴う障害を乗り越える力を生み出す。


本書では、前著『企業変革力』で示された「8段階変革プロセス」がさらに詳細な事例に基づいて紹介される。

第1段階: 危機意識を高める
第2段階: 変革推進チームをつくる
第3段階: 適切なビジョンを掲げる
第4段階: ビジョンを周知徹底する
第5段階: 人々の自発的な行動を促す
第6段階: 短期的な成果を実現する
第7段階: 気を緩めず、変革を推進する
第8段階: 変革を根づかせる


詳細な分析の中から、以下のような変革の成功事例に共通するパターンが見出された。

見る: 問題やその解決策を目に見えるものにするために、注目を集め、心を動かすような劇的な状況を創り出す。

感じる: 問題と解決策をイメージできるようになると、変革を促す感情(危機意識、前向きな見方、信頼)が呼び覚まされ、変革を妨げていた感情(怒り、現状満足、皮肉な見方、不安)が抑えられる。

変化する: 新たに芽生えた感情によって行動が変化し、強化される。
8段階のプロセスすべてに渡ってこの戦術をうまく使えば、その成果は目を見張るものとなる。


もちろん、データ収集や分析が重要でないわけではないが、分析には少なくとも次のような3つの限界がある。第一に、大きな真理を見つけ出すのに大規模な分析は必要ない。例えば、過去の戦略がうまくいっていないことや、あるチームが機能していないことなどは、それほど手間を掛けなくても分かる。第二に、激動する世界では分析的手法は通用しにくい。第三に、優れた分析を見たからといって、人が俄然やる気になるということはない。やる気とは理性ではなく、感情の問題なのだ。