人口減少経済のインパクト -プロになるための経済学的思考法(1)-

プロになるための経済学的思考法

プロになるための経済学的思考法

第1章 人口減少経済がもたらす強烈なインパクトとは?


1996年から始まっている人口減少は、有史以来日本が初めて経験する出来事である。さらに、2006年からは高齢化によって生産年齢人口(15歳-64歳)が急速に減少するため、人口減少率以上に経済規模は縮小する。世界の歴史を見ても、人口が減少しながらそれでもなお活力ある社会が実現できたケースは一例もない。


人口減少のインパク

乗数効果がマイナスに働き、需要の縮小が大規模に進行する可能性がある。しかし、既に巨額の財政赤字を抱える政府には、財政拡大による需要喚起をする余力は残っていない。

②様々なインフラの供給過剰問題が表面化する。

③経済規模の縮小に伴う産業、企業、職場での調整コストが劇的に増大する。

④従来の経済外交が困難になり、新たな外交能力を模索する必要がある。

⑤世界レベルで競争力のシフトが進み、国際的な取引関係が大きく変化する。


人口減少に立ち向かう端的な方法は、海外からの移民の受け入れである。しかし、現在の日本の同質的な社会構造からすればこれは非常に困難である。今のままでは、10〜20年後に労働力不足が本格化したときに、何の哲学もなく外国人を受け入れるということになりかねない。


別の対策は、長期的な戦略ではあるが、出生率を上げることである。しかし、抜本的な出生率回復のための政策はまったくと言っていいほど打たれておらず、ろくに議論もされていない。保育施設の不十分さをはじめ、子供を生むことが困難である現状が放置されているのである。その一つの要因は、「日本の政治を年寄りが牛耳っている」点にある。


また、このまま高齢化が進めば、貯蓄を切り崩しながら生活をする高齢者の増加によって、2009年には日本の家計貯蓄率はゼロになる可能性がある。そうなると、銀行の新規資金は尽き、国や企業を運営していくための資本が不足することになり、足りない資本は海外から借り入れるほかない。


これら人口減少と家計貯蓄率低下の問題が日本に突きつけているのは、従来の同質的な日本社会の体質を問い直し、この国の新しいあり方、コンセプトを考え出していかなければならないという事実である。今日本は、まさに私たち1人1人が、特に若者たちが、危機感を持ち、力を合わせてこの国のシステムを見直さなければならない時期にあるのだ。