真の情熱と献身 -Questions of Character(4)-

Questions of Character: Illuminating the Heart of Leadership Through Literature

Questions of Character: Illuminating the Heart of Leadership Through Literature

  • 作者: Joseph L. Badaracco Jr.
  • 出版社/メーカー: Harvard Business Review Press
  • 発売日: 2006/04/01
  • メディア: ハードカバー
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Chapter 4: Do I Really Care?


世界に変化をもたらすことがリーダーシップの意味するところであるとすれば、リーダーシップは長く、大変な道のりである。リーダーシップには、長年にわたる忍耐、勇気、粘り強さが求められる。世の中というものは変化に抗うのが常だからである。そのためリーダーは、自分が真に大切に思っていることは何か、真にコミットしていることは何か、あるいは、何かを実現するのに十分な程強くそれを重要であると考えているか、と繰り返し問うことになる。この点について、The Love of the Last Tycoonの主人公であり、アメリカで最も成功した映画スタジオの経営者であるスターの見せる仕事に対する献身的愛情から我々は多くのことを学ぶことができる。


Questions of Character 1: Am I Deeply Accountable to Myself?

スターのように献身的なリーダーは、第一に自分自身が十分に納得できる意味を仕事から見出している。つまり彼らは、長い時間をかけ、大変な思いをして変化を嫌う世の中を変えようと努力する中で、自分自身の人生をより情熱的で、真実味があり、満足のいくものにできると確信しているからこそ、そのような仕事に献身的に取り組むのである。スターもまた、自分自身をよく知り、自分の本当に必要とすることを理解し、自分の人生をより深く、充実したものへと変えてくれる仕事を見つけ出すことができた。彼の場合のように、成功したリーダーのほとんどが自分をより力強く成長させてくれる仕事を見つけている。なお、アメリカの哲学者であり、心理学者であり、宗教研究家であるWilliam Jamesによれば、自分自身を理解するための最良の方法は、自分が最も深く、情熱的で活き活きとした気分になる瞬間、「これが本当の自分だ!」と言う声が内側から聞こえてくるような瞬間を見つけ出すことである。


Questions of Character 2: Am I Deeply Accountable to Others?

真に世の中にインパクトを与えるためには、長期戦を戦い抜く力をもたらしてくれる、自分自身が納得できる意味を仕事に与えることに加えて、実際に自分の献身が世界をよりよいものとすることができるように、自分以外のものに対する真のコミットメントが求められる。これは当たり前のように聞こえるが、そうではない。一般的な見方は、自分自身に固執すればするほど自分以外の存在のことは考えなくなり、利他的になればなるほど自分自身の利益や関心は喜んで犠牲にするようになるというものだ。しかし、最も称賛に値する人物は、自分自身と自分以外の存在の双方のために生き、働くのである。この点においてスターは、自分自身の関心については既に述べたとおりであるが、彼の創り出す映画についても、人々に喜びを与え、大不況の苦難を忘れさせ、親たちが誇りを持って子供達を映画館に連れて行きたくなるような作品を妥協なく追求していた。


Questions of Character 3: Am I Realistic About the Conditions?

リーダーシップを果たすべきポジションにある人に求められる役割、義務(role obligations)と、2つめのQuestions of Characterから導き出される、自分以外の存在のために生き、働くということは区別されなければならない。前者は、スターの言葉で言えば”the conditions”であり、すなわち、リーダーが果すべき必要条件、最小限の要求事項である。偉大なリーダーは、このような要求は尊重し、応えていくものであるが、彼らがハードかつクリエイティブに働く理由はそこにあるのではなく、彼ら自身にとってその仕事が何を意味するのかという点(→Questions of Character 1&2)にある。この点について、スターは非現実的なロマンティシズムに囚われることなく「売れる」映画づくりをしていたが、それだけにはとどまらず、より人々を感動させる映画を追求したのである。


Questions of Character 4: Is there Sugar?

自分であれ他人であれ、人がどれだけその仕事を大切にしているかを知るための一つの方法は、その人がどのように仕事をしているかを注意深く観察することである。仕事を大切に思っている気持ちや献身的な姿勢は、毎日の仕事に現われるニュアンスや機微の中に見て取ることができる。その具体的なポイントの一つとして、筆者はスターの細部への徹底した拘りを例に挙げている。スターのように、優れたリーダーたちは小さなことがすべて偉大な物事の実現につながることを理解しているがゆえに、また、リーダーが小さなことをおろそかにすれば部下たちもそれに従うことを知っているがゆえに、細部にも気を緩めないのだという。ただし筆者は、細部までその仕事を大切に思う気持ちと、気にしすぎること、言い換えれば、偉大なリーダーの仕事に対する態度とマイクロマネジャーのそれとを区別することは難しいということも示唆している。スターの最終的な失敗の原因は過剰な献身にあったとも指摘している。この点に関するバランスを具体的にどう考えるか。残念ながら本書ではその答えは示されていない。