21世紀の企業像 -企業変革力(11)-

企業変革力

企業変革力

第十一章 これからの企業像


競争の激化によって変化のスピードがさらに高まる新しい時代で勝利を収めるためには、企業は常に中程度から高い程度に危機意識を保つ必要がある。そのためには、まず、現在眼にしているよりも数段優れた業績フィードバックのための情報システムが必要である。また、このようなシステムを生み、効果的に活用していくためには、今日をはるかに上回るレベルでオープンな議論を重視していかなければならない。政治的配慮、心を乱す外交辞令、自社に不利な情報をもたらした人物を罰するといった行動基準は排除されなければならない。このような正直な文化を持つ企業は実際に存在している。


変化の激しい環境にあっては、優れたたった一人のトップよりも、上層部の緊密なチームワークの方が大きな力を発揮する。第一に、恒常的に変化が進む環境では、いかに有能な人材であっても、一人では競合企業、顧客、技術情報等の変化し続ける要因に対応する十分な時間と専門知識を備えることは不可能である。第二に、重要な決定をたった一人で何千人という従業員に伝えていく時間も持てない。第三に、たった一人で圧倒的な人数の人たちから変革に対するコミット面を引き出すカリスマ性や技術を備えていることも稀である。


二十一世紀に成功を収める企業は、リーダー養成の場とならなければならない。数多くのリーダーを生み出さなければ、変革の中核を占めるビジョン、コミュニケーション、エンパワーメントが、期待に答える速度と頻度で実現されないからである。そして、リーダーを育てていくためには、よりフラットで、ぜい肉のない組織構造、コントロールが過剰でなく、リスクが許容される文化が要求される。また、従業員が十分にエンパワーされている状態になければ、品質向上に関する重要情報が従業員の心の中で未消化の眠ってしまい、変革を進めるためのエネルギーも不活発な状態に止まるため、企業が急激なビジネス環境の変化に対応することが不可能となる。従業員のエンパワーを進めるためには、リーダーシップ開発の際と同様の取り組みが求められる。


変化の激しい環境では、社内の各部門間の調整コストの高さは致命的なものとなる。そのため、全く付加価値を生まない相互依存性は存続が許されなくなり、21世紀の企業は、今日のそれよりもはるかに明快な組織となっているはずである。