9つの感情のトリガー -Emotions Revealed(2)-

Emotions Revealed: Recognizing Faces and Feelings to Improve Communication and Emotional Life

Emotions Revealed: Recognizing Faces and Feelings to Improve Communication and Emotional Life

Chapter2: When Do We Become Emotional?


私たちの情動反応が不適切であるとき面倒な経験をすることになるが、不適切な反応には次の3つのパターンがある。第一に、感じている感情は正しいが、その強度が不適切である場合。第二に、同様に感情自体は適切であるが、その表現の仕方が誤っている場合。第三に、感じている感情そのものがまったく不適切である場合。第一及び第二のケースを第四章で扱い、本章及び第三章では第三のケースについて扱う。


この問題を扱うためには、まず私たちがなぜ感情的になるのかという問いについて検討する必要がある。ここで、感情が湧き起こるためには、以下に述べる9つの契機がある。


①私たち自身の生活や幸福に、良い方向もしくは悪い方向で、大きな影響を与える何かが、起きているもしくは起ころうとしていると、正しくもしくは誤って感じたときに感情が生まれる。


特に生命の危険があるときなど、瞬間的に情動が私たちを支配し、考えることなくその重要な出来事に対処する力を与えようとする。そのような情動が強く、急激に生じるケースでは、後になって振り返ってもそのときどう事態に対処したかという記憶はあまり正確でない。情動を引き起こすきっかけとなった決定や評価は非常に速く、無意識によるものである。私たちは、常に外界をスキャンし、私たちの快適な生活や生存を脅かす何かが起きていないかどうか検討している自動的な評価メカニズム(autoappraisers)を体内に持っているに違いない。


autoappraisersが敏感に反応を示す要素には、文化の枠をも超えて多くの人に共通するもの(universal themes)と、各個人に固有のもの(variations)とが存在する。前者については、すべての人間の脳の中に、何らかの対応する感情を呼び起こすようないくつかの出来事が記憶されているのかもしれない。さらに、私たちが生きていく中で出会い、特定の感情を伴う解釈を行なうようになった出来事が、後者の要素として付け加えられていく。


autoappraisersにとって、variationsを評価することは、universal themesを評価するよりもより長い時間がかかる。そのvariationの性質がuniversal themeのそれから離れたものであればあるほど時間がかかり、さらに意識的に考えて評価を行なうこと(reflective appraising)が必要となる。


universal themesがどのように獲得されるものであるのかについては、残念ながら何ら立証された答えはない。ここでは2つの考え方を示しておく。第一の考え方は、universal themesもまた学習されるのだというものである(species-constant learning)。しかし、この考え方は、第一章で示した、表情による感情表現が文化間で共通していること、特に、先天的に視力のない人においてもそうでない人と共通しているという事実を説明することができない。したがって、universal themesは我々が進化の過程で獲得してきたものであり、遺伝的な要素であるという第二の考え方を支持せざるを得ない。このような考え方は、他の研究者の発見によっても支持されるものである。


残念なことに、autoappraisersは、必ずしも現在の環境に対して適切に機能するわけではない。幼少期に学習した、もはや今となっては脅威ではないvariationsに支配されるケースもある(*太古の昔であれば重要であったが今はそうでないuniversal themesについても同様だろう)。もしautoappraisersが信じがたいほど迅速に機能するものでなければそれほど問題にはならないだろうが、実際には私たちが意識的にコントロールできるほどゆっくりしたプロセスではない。


②意識的に考えて評価を行なうこと(reflective appraising)によっても感情は生み出される。


これは、autoappraisersが反応しないような曖昧な状況において発揮されるプロセスである。autoappraisersに比べて非常に時間がかかるという欠点がある。危機においては役に立たない。しかし、逆に、感情が生じたときに起きる反応をコントロールする余地があるという点は長所である。ただし、そのためには、自分自身にとってのホットな感情のトリガーとなる要素に習熟していなければならない。


その他7つの感情のトリガー:

③過去の感情的な情景を思い起こすこと

④想像

⑤過去の感情的な経験について話すこと

⑥他者の情動反応に対する共感

⑦感情のトリガーとなりうることを他者から指示されること

⑧自分もしくは他者が規範に反した時(怒り、嫌悪、軽蔑、恥、罪悪感、時に歓喜)

⑨新奇なこと、予期しなかったこと