Facial Expressionの普遍性 -Emotions Revealed(1)-

Emotions Revealed: Recognizing Faces and Feelings to Improve Communication and Emotional Life

Emotions Revealed: Recognizing Faces and Feelings to Improve Communication and Emotional Life

Chapter1: Emotions Across Cultures


感情についての二つの相反する見方がある。

①感情表現は社会的に学習されるものであり、文化によって異なるものである。

②感情表現は生得的なものであり、人類という種に共通するものである。


筆者は、「表情による感情表現」については②の見方が正しいということを、様々な文化に属する人を対象とした調査、特に、現代文化から隔絶された生活を送るパプア・ニューギニアの高地に住む人々の調査によって明らかにしている。


①を指示する見方に対して、まず指摘しなければならないのは、display rulesの存在である。すなわち、人は、本来感じている感情をそのまま表現するのではなく、社会的な慣習によってそれを抑制する傾向があるのである。また、display ruleは、publicの場で適用されるものであり(managed expressions)、privateの場では感情が感じるままに表現される(innate expressions)。このようなルールは文化によって大きく異なる。このようなルールの内容は文化によって大きく異なる。managed expressionsのみを観察すれば、表情による感情表現も文化によって異なるという結論を下しやすいが、それは誤りである。


また、ジェスチャーと表情による感情表現の相違もおさえておく必要がある。前者はまさに所属する文化によって規定されるものであるが、表情による感情表現はそうではないのである。


筆者は、前記の調査の中で、幸福、怒り、嫌悪、悲しみの表現については、ニューギニアの高地の隔絶された文化に住む人々においても、コーカシアンのそれとまったく異なることがないということを明らかにした(1969年に発表)。ただし、恐怖と驚きについては、ニューギニアの人々ははっきりと区別することができなかったが、これはアメリカの大学生たちにニューギニアの人々の表情の写真やビデオを見せた際にも同じ反応が見られた。Ekmanの発表の後、Heiderという学者が、全く同じ方法論で、同様に文化的に隔絶されたインドネシアのDaniという部族を対象に実験を行なったが、まったく同じ結果が得られた。さらに、②の見方が正しいとするならば、生まれつき目の見えない人もそうでない人と同様の表情による感情表現を見せるはずであるが、この点についても数多くの実験がなされ、数多くの成果があがっている。