ステップ② 強力な変革推進チームをつくる -企業変革力(4)-

企業変革力

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第四章 変革を進めるための連帯


変革には、これを推進する強力なチームの存在が不可欠である。そして、変化の激しい環境で着実な変革の成果を上げていくためには、推進チームは以下のような条件を満たさなければならない。

①ポジション・パワー: 十分な権限を持った重要な人物がチームに参加していること。これによって、抵抗を排して前進するためのパワーを得ることができる。

②高い専門知識: 取り組む課題に対応した様々な専門的視点がチームに備わっていること。その結果、情報を十分に反映した、納得性の高い意思決定が可能になる。

③高い信頼感: 企業内で高い評価を受けている人材が多数このチームに参画していること。その結果、チームが発表する提言が他の従業員によって真剣に考慮される。

④強力なリーダーシップ: 変革プロセスを推進する能力があると考えられる十分な数のリーダーが参加していること。最も重要な条件である。


チームに絶対に参画させてはならない人材のタイプも二つある。第一に、極めて大きなエゴを持ち、他の人たちがとても入り込む余地がないほどにこれを発散する人物。より具体的には、自分の弱点や限界について理解しておらず、他の人材の能力を認めず、組織目標に対する自己犠牲も望まないような人物である。第二に、チームワークを殺すような不信感を生み出す人物である。加えて、チームの活動に非協力的な態度を示す人たちに対しても、油断なく目を光らせておかなければならない。


なお、危機意識が低く、変革にもまったく興味を示しておらず、かつ上記2タイプのような属性を持つ社内の重要人物は、大きな変革の実行期においては退陣または退職を求めることが唯一の解決策とならざるをえない。変革に協力するよう彼らを説得することは困難であるし、むしろ妨害側に回る可能性が高いためである。安定した時期には無視しうる人事上の問題が、激しく変化を続けるグローバル経済のもとでは、極めて深刻な問題を発生しがちなのである。


効果的なチームワークを築くためには、何よりメンバー間の相互信頼が不可欠の条件となる。得てして、各部門への忠誠、部門毎の不信、本社・支社間の対立意識等によって相互信頼が疎外されるケースは多い。


40年前には、数多くの企業が、特に家族を巻き込んだインフォーマルな社交的活動を通じて信頼感を高めようと試みてきた。これらは今でも用いられているが、今日ではいくつかの深刻な問題も生んでいる。第一に、チームとしてのeffectivenessを高めるためにあまりに長い時間がかかる。第二に、夫婦共働きの場合、二つの異なった企業のそれぞれで頻繁に開催される社交的活動のすべてに彼らが参加することは不可能である。第三に、この種の組織開発プロセスでは、政治的意見、ライフスタイル、趣味等を統一する等、関係者に服従を求めるプレッシャーが強まる傾向がある。


今日、もっと迅速に、多様な人材を巻き込み、家族を参加させることなくチームビルディングを行なうために採用されているのが、注意深く計画された社外での研修である。例えば、少人数のグループが2日〜5日会社を離れた場所で合宿し、ディスカッション、分析、登山、ゲーム等の注意深く構成されたプログラムをこなす中で、相互理解と信頼を高めていく、といったものである。これらが必ず期待された成果をあげるとは限らないが、以前よりはうまく活用されつつある。


相互信頼の他にチームワークにとって不可欠の要件は、共通のゴールである。メンバー全員が共通の目標を持ち、それを何としても達成したいと願っている(コミットメント+強い意志)ときにのみ、真のチームワークが生まれる。


以上、強力な変革推進チームを築き上げるための手順をまとめれば、①条件を満たした適切な人材を選ぶ、②メンバー間の相互信頼を高める、③共通の目標を立てる、というステップになる。