ステップ① 危機意識を生み出す -企業変革力(3)-
- 作者: ジョン・P.コッター,John P. Kotter,梅津祐良
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2002/04/13
- メディア: 単行本
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第三章 危機意識を生みだせ
現状満足=危機意識の欠如を生み出す9つの要因
①大規模ではっきりと感じられる危機的状況の欠如
②はっきりと目に見える過剰なリソース
e.g. 素晴しく豪華な会議室での経営会議等
③低すぎる業績評価基準
④従業員の意識を狭い専門分野の目標に向けさせる組織構造
⑤誤った目標設定を許すプランニングとコントロールのシステム
⑥業績に関する外部からのフィードバックの欠如or不足
⑦「好ましくない」ニュースを伝える人物を疎外する企業文化
⑧特に多忙でストレスに悩まされている際に、問題の発生を無視しようとする人間の特性
⑨経営幹部からの「すべてうまくっている」という誤ったメッセージ
危機意識を高めるためには、これら現状満足の原因を除去するか、その影響を最小限に抑える必要がある。特に、現状満足に止まろうとする圧倒的な勢力に潰されないためには、大胆なアクションプランが必要である(事例多数)。そして、このようなアクションを実行するためには、強力なリーダーシップが必要となる。
実際のビジネスではこのようなアクションが実行されることは少ない。マネジメント過剰、リーダーシップ不足の環境で生きながらえてきた人材は、このような大胆なアクションは決して有意義ではない、むしろ危険である、と教育されてきたからである。また、これらの経営幹部がその企業で長期間働いてきた場合には、自分たちが浮き彫りにする問題が、過去に自分たち自身が生み出してきたものであるとして攻撃されることを極度に怖れる。
トップマネジメントがこのような注意深いマネジャーだけで構成されているケースでは、誰も危機意識を高めるために立ち上がることはない。このようなケースでは、取締役会が責任を持って優れたリーダーを見つけ、そのようなリーダーを経営の主要ポジションに任命する必要がある。
目指す改革が工場やセールスオフィス等、第一線の職場で進められるケースでは、その職場を担当するミドルマネジメントもしくは第一線のマネジャーが推進の主役を担うべきである。彼らに十分な権限が与えられていれば、他の部門でどんなことが起きていても、彼らは自部門で十分な変革を進めることが可能となる。時によっては、彼らのような組織内の中間層もしくは第一線に属する勇敢で有能な人物が、組織全体の変革を推進する大きな力を生み出す場合もある。特に、高い危機意識を持ちつつも行動が妨害されていると感じていた経営幹部が存在する場合はそうである。
最後に、どれだけ危機意識があれば十分なのか。ここでは、よく事情を理解している顧客、サプライヤー、株主等の外部の関係者に尋ねてみるのが有効である。「危機意識は十分に高まっているか?」「現状満足の意識は十分に払拭されているか?」彼らの意見を注意深く受けとめ、分析する中で状況を正しく理解できるようになる。自分と同じような利害関係をもつ同僚や、あなたの企業をよく理解していない外部の友人等に尋ねることは避けるべきである。