8つのステップとリーダーシップ -企業変革力(2)-

企業変革力

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第二章 成功する変革とその源動力


今日我々が直面している挑戦は、前の時代のそれとは大きく異なる。各企業は、競争に打ち勝つためだけでなく、何とか生き残るためにも大改革を進めることを余儀なくされている。このような「変革」の実現可能性について悲観的な見方もあるが、成功したケースを分析すると、二つの重要なパターンが浮かび上がる。第一に、成果をもたらした変革は、抵抗を排して変革を進めるために必要なパワーとモチベーションを生み出す多段階のプロセスを通して進められたケースが多い。第二に、このプロセスは、優れたマネジメントのみでなく、高度なリーダーシップによって推進されない限り、決して効果的に定着することはない。


大規模な変革を推進するための8段階のプロセス(コッターのリーダーシップ論の核)

①危機意識を高める

②変革推進のための強力な連帯チームを築く

③ビジョンと戦略を生み出す

④変革のためのビジョンを周知徹底する

⑤従業員の自発を促す

⑥短期的成果を実現する

⑦成果を活かし、さらなる変革を推進する

⑧新しい方法を企業文化に定着させる


これらのうちいくつかのステップが並行して進行することが常であるが、ステップをスキップしたり、あるいは確実な成果を築かずに先を急ぎ過ぎたりすると、間違いなく問題が発生する。また、大規模な変革プロジェクトのほとんどは、より小規模な多数のプロジェクトを内包しているが、それぞれの小プロジェクトも上記のプロセスを踏んで進行する。


なお、このような大規模な変革プロジェクトにおいては、単純にデータを集め、解決可能案を見つけ、状況を分析し、最適案を選ぶという作業以上のことが要請される。したがって、管理することだけを学び、リードすることを知らない人物にはこのプロセスを成功に導くことはできない。ここで、私たちはマネジメントとリーダーシップの違いを理解する必要がある。


マネジメントとは、「人材と技術を管理する複雑なシステムをつつがなく進行させるための様々なプロセス」である。他方、リーダーシップとは、「組織を誕生させる、あるいはその組織を激しく変化している環境に適応させていく様々なプロセス」である。


成功を収める変革は、70-90%がリーダーシップによってもたらされ、残りの10-30%がマネジメントによってもたらされる。マネジメント過剰でリーダーシップが欠如する組織では、傲慢さ、狭量、官僚主義が根づく。またこのような状態で変革を進めようとする場合、上記の多段階のアプローチを省略する等、負担をできるだけ軽減させようというモメンタムがはたらく。


変革プロセスを管理することはもちろん大切であり、有能なマネジメントがなければ企業変革はコントロール不能に陥る。しかし、ほとんどの変革においては、リーダーシップが根本的に重要である。優れたリーダーシップによってこそ、企業に存在する無気力や不活発の諸原因を除去していくことが可能となる。また、行動を変容するためのエネルギー、モチベーションを生み出すことができる。なお、このようなリーダーシップはまず一人か二人の人物によって始まるが、ごく小規模な企業の場合をのぞいて、リーダーの数を次第に増大させていくことが必要である。