Emotional Intelligence (2)

続いてダニエル・ゴールマンの『EQ』より。
第二章のポイントです。

扁桃核amygdala
・アーモンドの形をした神経核。脳幹の上、辺縁系の底辺にあたる部分に左右一つずつある。
・物事の情動的な意味を把握する機能を果す。
・情動と結びついた記憶、個人が物事に付与した意味、が貯蔵されている。
・愛情、恐怖、競争心や協調性等、すべての情動を握っている。

○情報伝達の流れ
・目や耳から入ってきた感覚信号
 →視床thalamus / optic thalamus
  →扁桃核(直通ルート。大雑把な情報)
  →大脳新皮質(情報が扁桃核よりも遅れて届く。しかし、十分な情報が届く)
・したがって、扁桃核大脳新皮質が自体を完全に把握する前に反応を開始できる。実際、私たちは、最初の1000分の2, 3秒で対象を無意識的に理解するのみならず、それに対する好悪の判断まで下してしまう(by 扁桃核)ことが分かっている。

○海馬hippocampusと扁桃核
・状況、あるいは文脈に関する詳しい記憶を貯蔵する。
・他方、扁桃核は事実に付随する情動、自らが事実に対して付した意味、を貯蔵する。

扁桃核のアラーミング機能
扁桃核は、貯蔵された情動の記憶と目の前の事態を照合し、何か大きな特徴が一致すると強い反応を示す。しかし、完全に確認する前に結論を出してしまうので、この回路はよく間違いを起こす。また、大脳新皮質よりも早く、生後まもなく完成する扁桃核は、生後二、三年までの幼少時における養育者との関係を記憶しており、ここで深く傷ついた経験がある場合、後の人生においても大きな影響を及ぼす。
・さらに、扁桃核に届く情報が、そもそも早いが不正確・不十分なものであるため、正確な判断を下すことがことさら難しくなる。

前頭前野prefrontal area [region] | prefrontal cortex
視床から大脳新皮質へつながる主要回路の末端、額のすぐ内側にある。
視床から大脳新皮質へ送られ、分析・理解された知覚情報に基づいて、情動反応や行動を計画し、命令する役割を担う。通常の情動反応は、前頭前野からの扁桃核に対する指令に従って発生する。
・また、扁桃核に起因する情動の興奮を抑えるスイッチの機能も持っている(逆に、緊急ブザーをならす役割を果すのが扁桃核)。

○情動による脳のハイジャック
・ハイジャックが起こる要因
 ①扁桃核の暴走
 ②大脳新皮質の機能不全(大脳新皮質のチェック機能がうまく働かなかったケース)
前頭前野が「ワーキング・メモリー」の役割を果すが、辺縁系で強い情動が起こると神経に雑音が入ってワーキング・メモリーの機能が阻害されることがある。まともに思考できなくなる原因がこれだ。

○理性と情動の協働関係
前頭前野扁桃核をつなぐ神経回路に損傷をうけた患者は、意思決定能力がひどく損なわれる。つまり、理性的な判断を下すためには、感情の働きが不可欠な要素なのである。したがって、時に情動はコントロール不能な暴走を始める場合もあるが、理性にとってはかけがえのないパートナーなのだといえる。
・「大切なのは、エラスムスが求めたような感情を排した理性だけの精神世界を打ち立てることではなく、ふたつの知性のバランスをとることだ。旧来のパラダイムは感情の影響力から解放された理性を理想とみなしてきたが、新しいパラダイムは情と知の調和を達成することが大切」なのだ(p.55-56)