ライブドア強制捜査(2) 経営倫理の問題のはず

ライブドア事件、相当大きな波を引き起こしていますね。

東京株式市場が昨日は日経平均が400円を超えて下げた上に取引停止になったかと思えば、今日は300円を超えて反発して見せたり。さらに、昨日は台湾、韓国、香港、シンガポール、オーストラリアのアジア・太平洋地域各国の総合株価指数が軒並み下落した模様です。まさに、「ドミノ倒し」。もっとも、今はサムスントヨタソフトバンク等の優良企業のおかげで持ち直してきているようです。ヨーロッパも影響を受けていたようです。

gogoさんがコメントで「日本版エンロン」とおっしゃっていましたが、事実の詳細がどのように判明するにせよ、間違いなくエンロンワールドコム並に強力な象徴的事件として語られていくことでしょう。

しかし、問題は何の象徴として理解するか、です。

僕が最も心配したのは、これを期に、「ほらやっぱり構造改革路線はだめでしょ。ホリエモンみたいな『稼ぐが勝ち』な経営者は構造改革で生まれたんだよ。やっぱり元に戻した方がいいよ」なんていうお馬鹿な議論がメディアでガンガン取り上げられるのではないか、ということでした。

昨年9月の衆院選における小泉自民党の大勝利、これは郵政民営化の是非を問うことが趣旨であったわけですが、それは同時に郵政民営化を最後の仕上げと位置づける小泉構造改革路線の是非を問うものでもあったわけです。結局、結果として、国による手厚い保護よりも、個人の自立を前提としたより自由度の高い社会へと舵を切ることに国民の大部分が合意した、それが前回の衆院選であったと僕は理解しています。

しかし、まかり間違って上記のような意見がメディアの大勢になったりなんかして、それが一般的に受け入れられたりした日には、衆院選での選択も全く持って薄っぺらいものに過ぎなかったということになってしまいます。そして、残念ながらやはり総体としての日本人はまだそれほど成熟していなかったのか、と思ってしまいます。

ただ、幸いにして今のところそのような議論はあまりされていないように思われます。テレビは見れないので分かりませんが、少なくともウェブ上の情報を見る限りでは。わずかに、「意趣返し」の亀井氏や赤旗が主張しているくらいです。安心しました。

もし今回のライブドアに対する強制捜査の結果がホリエモン氏に不利な結果となったとしても、問題は、あくまで経営者、経営陣の倫理観の問題です。社会制度の問題ではありません。もし不正を許してしまうような証取法や会計システム上の問題があったとしたら、それはテクニカルに正されるべきですが、経済に対する国の関与を必要最小限にとどめようとする構造改革路線の基本哲学を否定することはまったく論理的ではなく、有害であるとすら思えます。

考えるべきなのは、自由な社会の中で、いかに私たち一人一人が高い倫理観を持って行動していくか、いかにそのような経営者、ビジネス・パーソンを育てていくか、ということであって、自由を否定することではないはずです。

どうか日本が変な議論がまかり通るような社会ではありませんように。