資本コストの推定
- 作者: マッキンゼー・アンド・カンパニー,ティム・コラー,マーク・フーカート,デイビッド・ウェッセルズ,本田桂子,天野洋世,井上雅史,近藤将士,戸塚隆将
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/03/10
- メディア: 単行本
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第Ⅱ部 実践編
第10章 資本コストの推定
1. WACC
○WACC=「投資家が同等のリスクをもつ他の投資機会に投資をした場合に得られるリターン、つまり機会費用を意味する」(p.341)
→本章はWACCの求め方についての詳論。
ほとんどの企業にとって、WACCで営業フリー・キャッシュフローを割り引く方法が、単純、正確、かつ信頼性の高い企業価値評価手法である。ところが、LBO(レバレッジド・バイアウト)など、企業が目標とする有利子負債・資本構成を大きく変える可能性が高い場合、一定のWACCで割り引くと、金利による税効果の影響を過大評価(または過小評価)してしまう可能性がある。このような場合、アンレバード株主資本コスト(有利子負債がないと仮定した場合の株主資本コスト)で営業フリー・キャッシュフローを割り引き、税効果をはじめとする影響を個別に評価する。(p.342)
2. 株主資本コストの推定
○CAPM
・リスクフリー・レートの推定
・マーケット・リスクプレミアムの推定
・ベータの推定
○ファーマ-フレンチの3ファクターモデル
このモデルでは、株主の超過リターンを、市場の超過リターン(CAPMと同様に)、大型株に対する小型株の超過リターン(SMB)、簿価/時価比率の低い株式に対する簿価/時価比率の高い株式の余剰リターン(HML)と、それぞれ回帰させる。(p.371)
○APT
・ファーマ-フレンチの3ファクターモデルを一般化したもの。
ファーマとフレンチにより、CAPMとベータの信頼性は著しく損なわれた。今日ほとんどの研究者が、3ファクターモデルを用いて、過去のリスクとリターンを測定している。それでもなお、3ファクターモデルに批判的な研究者もいる。・・・既存の学説を否定するためには、より優れたものが必要であるが、いまだにCAPMを凌駕するものはない。したがって、この分野の新しい研究に注意しつつ、CAPMを使うこととしたい。(p.375)
3. 税引後有利子負債コストの推計
○オプション無しの長期債券の最終利回りを用いる
・短期債しか発行していない企業、債券が頻繁に取引されていない企業は類似格付の企業を参考にする
・投資不適格企業のハイイールド債についてはCAPMを利用
・支払利息の税効果を織り込む
○有利子負債・資本構成については、目標値をベースにする
・現在の有利子負債・資本構成を時価ベースで推定
・類似企業の有利子負債・資本構成をチェック
・経営者の資金調達に対する戦略、志向性を分析する
○複雑な有利子負債・資本構成をもたらすハイブリッド証券の扱い
・APV法を用いるとよい。
・状況によってはハイブリッド証券を個々の要素に分けて検討。