ステップ④ ビジョンを効果的に伝えるには -企業変革力(6)-

企業変革力

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第六章 ビジョンを周知徹底する


ビジョンの真のパワーは、企業の活動に従事しているほとんどの人の間でそれが共有されたときに発揮される。しかし、それは容易な作業ではない。まずはコミュニケーションの失敗例が紹介される。多大な努力と時間をビジョンの伝達に費やす。それは必要条件ではあるが十分条件ではない。従業員にとって、「情報の洪水」の単なる一部として新しいビジョンが伝えられたところで、意識に残ることすら難しい。マネジャーたちがそのビジョンに反する行動を取っていることが容認されている場合には、ビジョンはまったくcredibilityを得ることが出来ない。また、変革の前三段階が十分に達成されていない場合には、いくらビジョンを伝達しても受け入れられようがない。加えて、ビジョンを伝達する担い手自体の問題もある。すなわち、変革のビジョンを伝えるためには、マネジャーとしての訓練によって得たものを超えた能力が求められるのである。


結論を言えば、ビジョンを効果的に伝えるためには、7つのポイントが存在する。

ビジョンが明確かつ簡明であること

メッセージは焦点を絞り、専門用語を極力避ける。エレガントと言えるほどに直接的で、簡潔な表現とする。


比喩、たとえ、実例を活用すること

例えば、「我が社は、象であることをやめ、顧客重視のティラノサウルスになろう」など。優れた比喩表現は、変革に必要とされるメッセージをすべて包含しつつも、端的であり、感情に響き、心に残る。


様々な形のコミュニケーション手段を活用すること

ビジョンは数多くの方法を通じて伝えられたときにこそ、記憶されるチャンスが最も増大する。説明会、メモ、社内報、ポスター、一対一の対話等、チャネルは様々である。同時に、ビジョンの伝達をより効果的にするためには、その他の無駄な情報をあらゆる場面で極力排除する必要がある。


何度も繰り返し伝えること

どのように注意深く練り上げられた声明であっても、しっかりと心に刻み込むためにはどうしても繰り返し伝達される必要がある。筆者は、大規模な変革を成功させたすべてのケースにおいて、「何千回、何万回」に及ぶコミュニケーションが繰り返されていると述べている。


リーダーが模範を示すこと

新しい方向をコミュニケートする上で、実際の行動を通じて伝える方法も最も効果的な方法の一つである。これは、単にビジョンの内容を伝達するにとどまらず、ビジョンに対するcredibilityを高める上で効果的である。


言行不一致への対応を誤らないこと

⑤の裏返し。矛盾が完全に解消出来ない場合でも、その矛盾を簡潔に、包み隠さず伝えるべきである。


双方向のコミュニケーションを心がけること

成功を収める変革の試みにおいては、従業員のフィードバックにも十分に耳が傾けられる。それによって従業員による理解度も高まり、ビジョン自体に誤りがある場合には是正の機会が与えられる。